バーボン人気再び

February 23, 2017


世界でも、日本でも、バーボンの人気が高まっている。とりわけ日本市場では、居酒屋フードとも相性のいいバーボンのハイボールがじわじわと浸透中。サントリースピリッツのウイスキー・輸入酒部長を務める森本昌紀氏が、現状分析と戦略の一端を明かしてくれた。


文:WMJ

 

全世界のバーボン市場(テネシーウイスキーを除く)は、2005年比で約1.4倍に伸長している。サントリーによると、日本でもバーボンの販売数量はここ10年でほぼ倍増という勢いだ。日本人の2016年のバーボン飲用経験は全世代で伸びており(2007年比)、特に20代が20.7%と抜きん出て高い。そのうち「外飲み」が14.9%を占めることから、料飲店での体験が新しいバーボンファンの裾野を広げている現状がうかがえる。

「2017年はジムビームのハイボールを徹底訴求する」と語る森本昌紀氏(サントリースピリッツウイスキー・輸入酒部長)。居酒屋を舞台にした新しい路線は、ミレニアル世代を中心に受け入れられている。

90年代のバーボンブームと大きく違うのは、バーボン自体のイメージだ。煙草の煙が立ち込めるバーでオンザロックを楽しむ「男は黙ってバーボン派」も健在だが、現在の日本のバーボン人気を牽引しているのは、賑やかな料飲店で仲間と一緒にハイボールを楽しむミレニアル世代の男女だ。さらには世界的なウイスキーブームも手伝って、こだわりやストーリーに富んだクラフトバーボンも関心を集めている。このような要因が、多角的に21世紀のバーボン人気を後押ししているというのがサントリーの見立てである。

サントリースピリッツは、2016年に年間70万ケースのバーボンを売り上げている。トップセラーは、56.3万ケースのジムビームだ。2013年よりレオナルド・ディカプリオさんのCMで世界No.1バーボンの存在感をアピールし、2015年にはローラさんを起用したクールな路線に転換。売り上げは倍増し、昨年より普及しはじめたジムビームハイボール(通称「ビームハイボール」)の人気も上々だ。サントリースピリッツのウイスキー・輸入酒部長を務める森本昌紀氏は、2017年をビームハイボール徹底訴求の年と位置づけ、2020年には100万ケースの売り上げを目指す野心的な目標を掲げている。

「居酒屋でビームハイボールを楽しむお客様の姿を見ると、不可能ではないと感じます。ジムビームでエントリーユーザーを拡大し、メーカーズマークなどの上位ブランドでバーボンの奥深さを訴求したい。バーボンは世界の酒類消費の約15%を占めているので、現在8%の日本市場でもまだ伸びる可能性はあると思っています」

 

ハイボールからクラフトまで

 

バーボンをソーダ類で割る飲み方は世界中でポピュラーだが、食中酒としての広がりは日本市場が最先端といってもいいだろう。バーボンのハイボールは、甘い香りと後味のキレが魅力だ。揚物、ソース、和風のタレなどにも相性がよく、全国の居酒屋などでも定番化しつつある。

渋谷肉横丁の名物メニュー「肉天爆(ミート天ボンバー)」などをつまみにビームハイを1杯。サクサクとした衣の歯ざわりと溢れ出す肉汁で、バーボンもどんどん進む。

ちょうど東京渋谷のちとせ会館にある「渋谷肉横丁」で、2月25日(土)まで「渋谷ビームハイボール横丁」が期間限定オープンしているので訪ねてみた。赤ちょうちんの下で「肉天爆(ミート天ボンバー)」などの名物をつまみながらビームハイを飲むのは至福のひととき。揚げ物の油をハイボールの炭酸がすっきりと洗い流し、溢れ出る肉汁がバーボンの味わいを引き立てる。同店では期間終了後も定期的にイベントを開催していく予定である。

このような店舗は、2016年に巻き起こった「横丁ルネサンス」の現場であり、メンチカツのような居酒屋料理でジムビームハイボールを飲む「ビームハイ酒場」のモデルでもある。サントリーは今年中にモデル店「ビームハイ酒場」を1,500店まで増や、取り扱い店を増やすためにスターターキットを2万店に投入する活動に乗り出す。家庭用には「特製パック」の投入を予定しており、3月に発売されるサントリーの強炭酸ソーダもハイボール人気を後押しするはずだ。

そして、ハイボールで入門したバーボンの世界には、想像以上の深い奥行きがある。まずは手間と時間をかけて丁寧につくられたプレミアムバーボンだ。サントリーがプレミアムバーボンの中核に位置づけているのはメーカーズマーク。冬小麦を使用したやさしい甘みを活かし、メーカーズマークオレンジハイボールやメーカーズマークオールドファッションなどで幅広い飲み方を提案する。

さらにその先には、ノブクリーク、ブッカーズ、ベイカーズ、ベイゼルヘイデンなどのクラフトバーボンもある。産地、つくり手の顔、こだわりなどのストーリー性を重視し、「ブッカーズライ(ライウイスキー)」がウイスキーバイブル2017で「世界一のウイスキー」になるなど世界的な関心も高い。

おいしくて楽しいお酒の世界に「ちょっといいもの」を提案していくのがウイスキーの役割だと語る森本昌紀氏。そもそもウイスキーは、初めて飲んだ人が即座にファンになるタイプの飲料ではない。長い時間を必要とするウイスキーの生産と同様に、ゆっくりと息の長いファンを育てる戦略をサントリーは実行に移している。

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