オークション市場の主役は山崎

February 20, 2017


世界的なウイスキーブームで、コレクターズアイテムへの投資も活発なウイスキー市場。ここ1年の主役も、おなじみのジャパニーズウイスキーだった。ジョン・マコーミックが、オークション市場の分析から2016年を振り返る詳細なレポート。

文:ジョン・マコーミック

 

2016年のオークション指標を振り返ると、年間を通して話題を席巻した銘柄のひとつが山崎であったことは疑いようがない。前年まではトップ10圏外で鳴りを潜めていたが、ここ1年を通して着実に上昇を続け、12月には3位にまで上り詰めた。

コレクターたちも、こぞって山崎をコレクションに加えた1年だったといえる。ファン垂涎の「山崎シェリーカスク2013」をめぐる争奪戦はもとより、ミズナラ熟成のエディションや、それ以前に発売されたビンテージのボトルが脚光を浴びた。10月には「山崎50年」のファーストエディションに1本850,000香港ドル(84,520英ポンド、約1,200万円)の値が付いている。スタンダードサイズのボトルに入ったウイスキーとしては、オークションにおける世界最高値を更新する記録である。

その後も、2011年に発売された「山崎50年」のサードリリースエディションが何本か出回って高値を付けた。11月8日におこなわれたオンラインオークションのウイスキー・ドット・オークションでは、同オークションの最高価格記録を更新する1本62,600英ポンド(約880万円)という値がついている。

11月18日には、香港のボーナムで同様の「山崎50年」が1本480,000香港ドル(50,199英ポンド、約710万円)のハンマープライスをさらった。アーカイブを振り返ってみると、ボーナムではわずか8カ月前に同銘柄が250,000香港ドル(20,821英ポンド、約300万円)で落札されていた記録があるので、1日あたり422香港ドル(約6,000円)ずつ価格を上げてきた計算になる。ボーナムのプレスリリースではこの価格が「山崎50年」サードリリースの過去最高値であると主張しているが、オンラインオークションとの比較をどう捉えるかは読者の皆様にお任せしよう。

 

ここ1年のオークションを振り返る

 

2016年の暮れにかけて、オンラインオークションでは高額商品の取り引きが盛り上がりを見せた。ウイスキー・オンライン・オークションズでは、「ダルモア カンデラ」が15,200英ポンド(約210万円)という妥当なラインで取引されている。またウイスキー・オークショナーでは、ゴードン&マクファイルのデキャンタ入り「ジェネレーションズ モートラック75年」が17,500英ポンド(約250万円)で取引された。同年春の値段をほんの少しだけ下回る額である。

底冷えのする冬に入っても、スコッチ・ウイスキー・オークションズは1本数百万円クラスのセールスを連発し、販売手数料0%という同社の戦略を再び堂々と誇示することになった。実績を列挙すると、「バルヴェニー50年 1937」が11,000英ポンド(約160万円)、「タリバーディン60年 1952」が12,000英ポンド(約170万円)、1939年産の「グレンフィディック50年」が13,500英ポンド(約190万円)、「ハイランドパーク50年」が14,500英ポンド(約200万円)、「グレンリベット ウィンチェスターコレクション 1964」が15,000英ポンド(約210万円)、「軽井沢 1964 48年」が17,500英ポンド(約250万円)、「軽井沢 1981 桜 カスク#158」が18,000英ポンド(約260万円)、「ジョニーウォーカー ディレクターズブレンド」の6本セットが19,000英ポンド(約270万円)などである。さらには「イチローズモルト カードシリーズ」の「ハート」をエースからキングまですべてそろえたセットが67,500英ポンド(約950万円)で落札された。

秋にはいくつかの新発売ボトルが話題になり、これを商機とみた人々が即座に転売して利益を上げようとした。その結果を見てみよう。800英ポンド(約11万円)で発売された「ラガヴーリン25年」 は最高で1,050英ポンド(約15万円、スコッチ・ウイスキー・オークションズ)、最低で900英ポンド(約13万円、ウイスキー・ハンマー)の値をつけたが、最初の買値を下回ることはなかった。310英ポンド(約4万5千円)で発売された「アードベッグ21年」は、利幅としては小さい420英ポンド(約6万円、ウイスキー・オンライン・オークションズ)や、原価割れの280英ポンド(約4万円、同じくウイスキー・オンライン・オークションズ)で取引された。

おそらくもっとも取り引き価値の高いと思われた新発売ボトルは、わずか500本限定の「ザ・マッカラン40年」である。多くの人が、抽選を通して蒸溜所から直接購入した。販売直後の取り引きでは、発売価格の5,000英ポンド(約70万円)が7,150英ポンド(約100万円、ジャスト・ウイスキー)までに跳ね上がった例もあれば、5,900英ポンド(約80万円、ウイスキー・オンライン・オークションズ)と穏当な例もある。発売時の価格も高いが、このマッカランは前述のアードベッグやラガヴーリンよりも長期間にわたってさらに価格を上げていくポテンシャルを秘めている。

このようなオークションルームでの公式な取引実績は、すべてウイスキーマガジンの指標であるWMIランキングに影響を及ぼす。ブルイックラディは初めて25位圏内から姿を消した。第9位のアードベッグは、同ブランドとして過去最低のランクに甘んじた。逆に25位圏内に初めて登場したのは余市だ。トップ5のうち、3つがジャパニーズウイスキーである。10月に3位まで上り詰めた羽生を、年始には12位だった山崎が最後に抜き去った。WMIにおける軽井沢の平均価格は1年で600英ポンド(約8万円)ほど増えたが、ザ・マッカランの伸び幅はそれを上回る約700英ポンド(約10万円)だった。

2016年終盤の勢いを見るにつけ、新しい年も世界中のウイスキーオークションで活発な取り引きがおこなわれることは間違いない。ますます動きの速さを増すオークション市場を、今後も注意深く見守っていきたい。

 

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