「ビーム サントリー」始動

May 26, 2014

5月15日(木)、ビーム社の全発行株式を総額1兆6000億円にて取得完了したサントリーホールディングス株式会社が記者会見を行った。

1月13日、サントリーによるジムビーム社の買収合意が話題になったことはまだ記憶に新しいことと思う。今回、正式に「ビーム サントリー」という社名が発表され、その方向性と実際の運営についての会見が行われた。

まずサントリーホールディングス株式会社社長 佐治信忠氏によってM&Aの過程の説明と新会社「ビーム サントリー」の経営についての説明が行われた。
ビーム社は社名を「ビーム サントリー」に変更し、サントリー酒類株式会社のスピリッツ事業は年内に「ビーム サントリー」との統合を目指す。これにより同社は世界3位のプレミアムスピリッツメーカーとなる。同社は今日までビーム社を率いてきたマット・シャトック氏チェアマン兼CEOとして、米国 イリノイ州ディアフィールドの本社で経営する予定だ。

2013年の統計では世界第4位のビーム社と第10位のサントリーであったが、今回の買収により世界第3位に躍り出た(第1位:ディアジオ社、第2位:ペルノ・リカール社)。

買収したサントリーの社名がビーム社の後に続き、本社をアメリカとしてシャトック氏が続投し采配をふるうことについて、佐治氏は「シャトック氏の人柄に惚れ込んだ。彼が経営手腕を発揮しグローバルな展開をするうえで、アメリカに本拠地を置くことは自然な流れ」と説明する。

続いてシャトック氏が同社の方向性、ターゲットの実現に向けての具体的なプランを説明。
世界最大のスピリッツ市場であるアメリカをはじめ、世界の様々なエリアにて両社の代表的なブランドの展開とグローバルな成長の実現を図る。
ブランドポートフォリオとしては以下の通り。注目すべき点は、世界でも唯一の「五大ウイスキーを保有する酒類メーカー」となったことである。

カテゴリー 代表ブランド
バーボンウイスキー ジムビーム、メーカーズマーク、ノブ クリーク
ジャパニーズウイスキー 山崎、白州、響、角瓶
スコッチウイスキー ティーチャーズ、ラフロイグ、ボウモア
カナディアンウイスキー カナディアンクラブ
アイリッシュウイスキー キルベガン
コニャック クルボアジェ
テキーラ サウザ、オルニトス
ウオツカ ピナクル
リキュール ミドリ

さらに、主要カテゴリーを網羅するこれらのポートフォリオを、ビーム社が築き上げた販売網に乗せてグローバルなビジネスを展開。日本とアメリカにおける強固な基盤は特筆するまでもないが、オーストラリア、ドイツ、英国、スペイン、カナダといった世界主要市場での強みはすでに十分に持ち合わせており、今後はロシア、インド、メキシコ、ブラジル、中国などの新興国での大きな成長を見込む。

創業からの精神を大切に、業界のパイオニアとしてそれぞれ発展をしてきたビームとサントリー。
ジムビームの起源は1795年、現在は世界No.1バーボンとして名を馳せており、マスターディスティラーのフレッド・ノウ氏は7代目だ。
サントリーもおよそ90年前に山崎の地で日本でのウイスキーづくりを始め、言わずと知れた国内最大手酒類メーカーであるだけでなく、清涼飲料水や健康食品、不可能と言われた「青いバラ」を開発するなど多角的な事業展開を行っている。
そのどちらにも共通する起業家精神と革新性―「ビーム サントリー」は「やってみなはれ」と”Go for It!”の融合であり、たゆまぬ努力を続ける「ものづくりの精神」が根底に流れている。

世界の酒類市場を一変させた「ビーム サントリー」の始動によって、今後ますますウイスキー業界の展望は明るくなってきた。
我々ウイスキーファンとしては、経済効果だけでなく、ウイスキーづくりの技術共有新たな商品開発の展開など…より素晴らしいウイスキーとの出会いを期待したいところだ。世界でジャパニーズウイスキーがもっと愛されて、また一方でそれを追い越せと各国でのウイスキーづくりが活性化する。
大きな挑戦と前進に期待をしつつ、樽の中の原酒のごとく、じっくりと新たな展開を楽しみにしようではないか。

 

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