アードベッグとグレンモーレンジィの風味を管理し、革新的な新商品を開発するブレンダン・マキャロン。ビル・ラムズデンの後継者と目される若き才能に、ガヴィン・スミスがインタビューする2回シリーズ。

文:ガヴィン・スミス

 

グレンモーレンジィ・カンパニーのウイスキー原酒熟成管理部長を務めるブレンダン・マキャロンは、最近発売された「アードベッグ19年 トリーバン」(トリーバンとはゲール語で「鳴き砂」の意)の生産責任者でもあった。普段の勤務地はエディンバラにあり、直属の上司はウイスキー蒸溜生産部門長のビル・ラムズデン博士。大半の仕事時間をグレンモーレンジィとアードベッグのシングルモルトづくりに費やしている。

「アイラ島に3年間住んでいたこともあるので、もともとアードベッグには強い縁があるんです。ディアジオ傘下であるポートエレン・モルティングの工場長を務め、さらにカリラ蒸溜所とラガヴーリン蒸溜所の蒸溜所長も務めていました。ポートエレンでは、アードベッグに販売するヘビリーピーテッドのモルト原料を生産していました。アードベッグを直接担当するようになって5年経ちますが、アードベッグのウイスキーづくりはもう8年がかりで手伝っていることになりますね」

グラスゴー近郊のコートブリッジに生まれたブレンダン・マキャロンは、ストラスクライド大学で化学工学を学び、グラクソ・スミスクラインでの勤務を挟んでディアジオの新卒採用に申し込んだ。

やがて数年が過ぎ、オーバン蒸溜所の蒸溜所長に28歳の若さで就任。その後、前述のアイラ島へと赴任することになった。

「素晴らしくやりがいのある仕事であることはわかっていました。でも島の生活に耐えられるかどうか不安もあったんです。結局、アイラ島で過ごした時間は最高でした。アイラにいるほうが合理的なら、喜び勇んで島に住むと思いますよ。今でもアードベッグまで出張があるたび、妻は私が勝手に家を購入して帰ってくるのではないかと気をもんでいるくらいですから」

 

師から受け継ぐ実験精神

 

ディアジオの社内で、別の部門にヘッドハントされたいきさつも教えてくれた。別の部門というのは、つまりグレンモーレンジィを生産する部門のことである。

ドクター・ビルことビル・ラムズデン博士より重大な任務を委譲されているブレンダン・マキャロン。その卓越した手腕を新商品の品質で証明している。

「グレンモーレンジィのチームに入るとき、ディアジオは『ウイスキー原酒熟成管理部長』という新しい役職を私のために作ってくれたんです。このまま順調に行けば、私が次期ウイスキー蒸溜生産部門長ということになります。しかしもちろん、ことを急ぐつもりはまったくありません。ビル・ラムズデンが現職に留まる期間が長いほど、私の成功も約束されますから。彼が今の仕事長く続けるほど、世代交代もスムーズなものになるでしょう」

ブレンダン・マキャロンが自分の役割について説明する。

「アードベッグとグレンモーレンジィ、この2つの蒸溜所のために生産計画を策定します。バッチごとにすべてノージングとテイスティングをおこない、テイスティングノートを書いておきます。そしてビル・ラムズデンが発案する『19年熟成で商品をまとめてくれ』といったプロジェクトを具現化していきます。年間8〜10週間はアンバサダーとなって世界各地をまわり、シアトルにあるバーボンブランド『ウッディンビル』の仕事もします。小さいけど、本当に素晴らしい蒸溜所なんですよ」

ウイスキー界屈指のアイデアマンと評されるビル・ラムズデンとは、いったいどんな師弟関係なのだろう。

「ビル・ラムズデンと私は、最高のウイスキーをつくるために似たような思考プロセスを辿ります。2人とも熟成年数の重要性をはっきりと認識していますが、かといってそればかりに固執することもありません」

1年に7〜8回くらいアイラ島に出かけ、そのたびに数日間滞在する。アイラ島に滞在中には、生産工程における実験をしてみることもあるという。

「例えば最近は、高タンパク質の新しい大麦品種を原料にした実験を続け、全体の工程をどう調整すべきか確かめてきました。マッシュタンの温度や、比重が高い麦汁の発酵特性や、発酵時間の延長などに関する細々とした実験ですね」
(つづく)