「グレン グラント 18年」が新発売

June 27, 2017

グレン グラントのフラッグシップボトル「グレン グラント 18年」の発売にあわせ、マスターディスティラーのデニス・マルコム氏が来日した。見事なまでにバランスのとれた華やかなアロマの詳細が、テイスティングを通して明らかになる。

文:WMJ

 

1840年にスペイサイドのローゼス村で創業された「グレン グラント」。170年以上に及ぶ長い歴史を経て、現在も高品質なスコッチシングルモルトウイスキーを生産している名門だ。1870年に刊行されたアルフレッド・バーナード著『英国のウイスキー蒸溜所』には、すでに19世紀半ばにグレン グラントがシングルモルト商品を販売していたとする記述がある。

グレン グラント蒸溜所を設立したのは、ジェームズ・グラントとジョン・グラントの兄弟である。ジェームズはエンジニア、政治家、発明家の顔を持つ社交的な人物。一方のジョンは寡黙な職人肌のディスティラーだったという。地元の実力者だったジェームズは、1951~52年に付近の鉄道網を整備させて独自のサプライチェーンを構築し、商品の出荷や原料の輸送に役立てた。1861年には自家発電機を導入して、村全体に電気を普及させたという逸話も残るパワフルな事業家である。

ジェームズが1878年に没した後、25歳で家業を引き継いだのが息子のジェームズ・“ザ メジャー”・グラントだ。進取の精神に富んだ彼は、グレン グラントの象徴ともいえる細長のポットスチルや精溜器を導入。現在グレン グラントのマスターディスティラーを務めるデニス・マルコム氏が、この精溜器の重要性を強調する。

「初溜釜と再溜釜の両方に取り付けられた精溜器は、きめが細かく軽やかな風味の要素だけをコンデンサーに送る装置。当時はそんなメカニズムを検証するのも困難でしたが、この冒険的な投資によってグレン グラントのすっきりとしたクリアな酒質が確立されたのです」

やがて蒸溜所はザ メジャーの孫に引き継がれ、デニス・マルコム氏の祖父や父が働くようになる。マルコム氏本人が樽職人の見習いとして蒸溜所で働きはじめたのは、わずか15歳のときだったという。職歴50年以上に及ぶ経験を活かし、現在はウイスキー製造の最高責任者としてグレン グラントの歴史を継承している。

 

イタリアでナンバーワンのシングルモルト

 

今回、デニス・マルコム氏は「グレン グラント 18年」の発売にあわせて来日した。前述のようなブランドの歴史を踏まえ、テイスティングによってグレン グラントの味わいを紹介するのが大きな目的のひとつである。

グレン グラントのウイスキーづくりを理解するのに、重要なポイントのひとつがイタリア市場との関係であるとマルコム氏は語る。グレン グラントは、イタリアで売り上げナンバーワンのウイスキーブランドだ。1859年にイタリア人ビジネスマンのアルマンド・ジョビネッティがグレン グラントを訪問し、5年熟成のウイスキーに一目惚れして輸入をスタート。それが70年代半ばには、イタリアだけで50万箱を販売する定番銘柄になっていたという。もともとグラッパなどを愛飲してきたイタリア人の嗜好に、ノンピート麦芽だけでつくられるグレン グラントのすっきりとした華やかさがぴたりとはまったのだろう。

イタリアで販売されているグレン グラントは5年熟成ものだ。5年で最高の品質に到達させるため、熟成に使用するバーボンバレルはサードフィルまでという厳格なポリシーを守っている。

「つまりグレン グラントのバーボンバレルは、15年で用済みになります。それ以上長く使用するとアロマが不足してしまうのです。バーボンバレルの購入費用は毎年100万ポンド(1億4000万円)以上に及びますが、古樽で妥協することはありません」

 

主力4商品を比較テイスティング

 

デニス・マルコム氏は、新発売の「グレン グラント 18年」を含む主要4商品のテイスティングを用意してくれた。ウイスキー評論家の土屋守氏も、日本人のファンを代表して解説を加えてくれる。

最初に味わったのは「グレン グラント ザ メジャー リザーブ」。熟成年は約7年と若々しいが、それでもイタリア人が好む5年ものよりは熟成期間が長い。バーボンバレルが主体で、ブランドの主要な特徴が現れている。クリーミーなフルーツ風味と、ナッツを感じさせるフィニッシュが印象的だ。土屋氏も「これほどクリアな酒質を持っているスペイサイドモルトは他にない」と断言する。

「グレン グラント 10年」は、シェリー樽熟成の原酒も使用しているため、オレンジやタンジェリンの感触も加わる。フィニッシュはアーモンドのようにやわらかいナッツ風味。このフィニッシュに、シェリー樽の影響が見られると土屋氏は指摘する。

デニス・マルコム氏によると、「グレン グラント 12年」は10年よりもさらに少しシェリー比率を上げている。ハチミツのような香りに、アップルパイを思わせるクリーミーなコクとほのかなスパイス。土屋氏は「2年の違いなのに、予想をはるかに上回るほどリッチ」と驚いた。

そして最後に、いよいよ「グレン グラント 18年」のグラスを手にする。色は12年よりも明るいゴールドだ。デニス・マルコム氏によると、熟成に使用している樽材はアメリカンオーク(バーボン樽)のみ。まさに「原点に帰った味わい」なのだという。

香りを嗅ぐだけで、淡い色から想像できないほどの濃厚なアロマを感じる。グレン グラントならではのスムースな飲み口はそのままに、蜂蜜、バニラ、アーモンドを思わせるリッチな甘味。土屋氏は「18年熟成と思えないほどにフレッシュ」とうなった。

最近になって一新されたボトルのデザインは、グレン グラント蒸溜所を象徴する細長いポットスチルのネックをイメージしたもの。あの豊かなアロマを体験した後は、クリアグラスから見えるウイスキーの色もいっそう輝いて見える。

昨年10月に発行されたジム・マーレー著「ウイスキーバイブル2017」で、「グレン グラント 18年」はスコッチウイスキー部門No.1の「スコッチ・オブ・ザ・イヤー」を受賞したばかり。スペイサイドの伝統が生み出した傑作を、ぜひじっくりと味わってみよう。

 

グレン グラント 18年

容量:700ml

アルコール度数:43%

価格:オープン価格
   参考価格:15,000円(消費税別)

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