“Northern Trickster” 「ハイランドパーク ロキ」登場【前半/全2回】

December 18, 2013

ハイランドパーク蒸溜所のヴァルハラコレクション第二弾「ロキ」発売に伴い、グローバル・ブランド・アドヴォケイトのダリル・ハルディン氏が来日。お話を伺った。

昨年大きな話題となったハイランドパークの新シリーズ・ヴァルハラコレクション「ソー」。北欧神話の神々をテーマにしている。本年降臨した神は「ロキ」…いったいどんな神で、どんなウイスキーなのか?


――本日はお時間をいただきありがとうございます。昨年も「ソー」の発表会でお会いしましたね。早速、今回テーマとなった「ロキ」とはどんな神なのかお聞かせください。

ダリル氏 前作「ソー」は雷神であり、同時に人々を楽園に連れていく役割を担った神でした。しかしこの「ロキ」はいわゆる本物の神様ではありません。神々の世界と人間界を行き来し、どちらにもいい顔をする存在…北欧神話の中では彼はトリックスターです。ハエや蛇に変身することもできましたし、人をそそのかして「こんなことをするつもりじゃなかった」というようなことをさせます。その結果、人を死に至らしめるのです。無秩序を創り出す神と言えるでしょう。この神をウイスキーの味わいで表現してみようと思い、「こういうキャラクターを反映したウイスキーをつくってくれ」とつくり手へ依頼しました。そして担当のマックス・マクファーレンが貯蔵庫の樽の中から原酒を選び出し、ブレンディングしてつくり上げたのが、この「ロキ」です。

――なるほど。ではそのイメージからするとこちらは非常に変化に富んだウイスキーということでしょうか。

ダリル氏 仰る通り、ひと口ごとに違った顔を見せてくれるウイスキーです。理由はいくつかあります。そのうちのひとつは、「使っているピートが通常のものとは違う」ということです。この原酒に使われているピートはスコットランド本島のケイスネス地域で採ったものです。基本的にハイランドパークではオークニー産のピートを使用しています。これは軽やかで甘い香りをもたらします。しかし「ロキ」は火の神でもありますので、このケイスネスのピートの強いスモーキーな香りは、炎をイメージさせるのに成功しています。さらに言うと、この異なるピートの原酒を使うということは、つくり手にとっても「無秩序を生む」作業でもありました。マックスはこのいつもと違う作業をとても楽しんでいましたよ。

――そのような原酒があったというのは興味深いですね。違うピートを使うというプロジェクトが以前あったのですか?

ダリル氏 そうなんです。実は17年前、本島のピートを使ったらどうなるかという実験をしたことがあり、その時の原酒が残っていました。今回「ロキ」をつくるにあたって「そういえば」と調べてみたらぴったりだったのです。

――では、前作「ソー」と比べてみると味わいはいかがでしょう。

ダリル氏 「ソー」はハイランドパークには珍しくバーボン樽の原酒が使われていました。通常はシェリー樽を使用していますから。神様としての個性を比べてみると、彼は屈強で頼もしい神ですが、賢いかと言われればそうでもありません。でも私自身、大好きなウイスキーなんですよ。「これは何の香りだろう?」と悩むことのない、率直なウイスキーです。
それに比べると「ロキ」はとても奥深い。アメリカンオーク樽とヨーロピアンオーク樽による複雑さに加えて、先ほどお話しした本島のピートによる全く異なる個性もあります。予想に反して繰り返し変化する、変幻自在なウイスキーです。

――「ソー」がシリーズ第一弾として登場してから、次にこの「ロキ」が現れるまで、世界的にどのような評判や意見があったでしょうか?

ダリル氏 ヴァルハラコレクションはお陰様でとても好評です。「ソー」はウイスキー自体も評価が高く、ストーリーも興味を持っていただいたようです。そもそも有名な神様なので、受け入れられやすいと我々も思っていました。しかし、「ソー」はGoodie…イイヤツなのです。「ロキ」はBaddie、悪玉ですね。悪いヤツのことは、つい気になってしまうでしょう?「そんな悪玉をイメージしたウイスキーってどんなもの?」という質問をたくさん受けました。むしろ「ソー」に関する質問よりも多かったほどです。さらに実際「ロキ」をテイスティングした方からは、びっくりするほど高い評価をいただきました。ジム・マーレイ氏からは100点中96点をいただいたのです。やっぱりこれはいいウイスキーなんだなと改めて実感しました。

――ではその北欧のエッセンスがたっぷりと詰まったこのヴァルハラコレクションと通常のハイランドパークのラインナップ、どのように違いを楽しむのがお勧めでしょう?

ダリル氏 ハイランドパークの中心商品は、常に一定です。使うピートの種類も樽も決まっていて、きっちりと同じものを生産する…年数によってヨーロピアンオークとアメリカンオークの比率が異なったりはしますが、基本的には「決まったもの」です。一方ヴァルハラコレクションはその決まりを正面から打ち破った、正反対のものです。神々のイメージからウイスキーをデザインする、実験的な意味合いもあります。スタンダードのハイランドパークを中心に、その変化球としてのヴァルハラコレクションという感覚でしょうか。我々も楽しく試行錯誤しています。今度はどんなふうにしようか、と。

――つくり手側も、飲む側も、そのウイスキーそのものの味わいとともにストーリーを楽しめますね。

ダリル氏 そうですね、ハイランドパークの創始者は北欧の血を引くマグナス・ユウンソンと言われていますから、やはりスコットランド本島や他の島とはまた違う背景があることを感じていただけたら光栄ですね。世界中でハイランドパークを飲んで下さっている方々のほとんどは、オークニーがどんなところであるかはご存じないと思います。そういう方々にこのヴァルハラコレクションで、「このウイスキーがどんなところでつくられているか」を知っていただけることはとても嬉しいです。
【後半に続く】

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