まだまだ成長するウイスキー市場

September 17, 2018

プロ向けの恒例イベント「モダンモルトウイスキーマーケット2018」が9月7日に開催され、今年も盛況のうちに幕を閉じた。酒類市場全体がやや縮小するなか、ウイスキー市場は引き続き力強く伸長を続けている。

文:WMJ

 

「モダンモルトウイスキーマーケット」は、酒類食品総合卸売商社の三陽物産が2006年からお酒のプロ向けに開催しているウイスキーイベントである。第13回めの開催となる今年は、大阪会場が台風の影響で中止となったため、2018年9月7日に東京会場のみで開催された。

東京秋葉原のアキバスクエアに集った出展社は、昨年よりも1社多い14社。各社ブースでは最新の取り扱い商品が並び、そのすべてが試飲できる。またステージプログラムでは日英から一流の識者が登壇し、テイスティング付きでウイスキーづくりに関するセミナーを開催する。希少なボトルの購入権をめぐる限定品抽選販売会もあり、飲食店の経営者にとってはウイスキーの最新動向をキャッチできる絶好のチャンスだ。

有料試飲コーナーも常時フル回転。酒類市場全体がやや縮小するなか、モルトウイスキー市場は成熟しながら裾野も広げている。

三陽物産代表取締役社長の岡田浩幸氏によると、2018年上半期の酒類市場全体では前年比97%とやや縮小傾向。しかしビール、清酒、焼酎、ワインなどが軒並み苦戦しているなかで、ウイスキーは前年比104%と引き続き力強く伸長を続けている。輸入ウイスキーだけに絞れば、前年比109%とまだまだ成長の余地がありそうな勢いだ。岡田浩幸氏が開催の主旨について説明する。

「2009年にハイボールで広がったウイスキー市場が、着実に成熟しながら成長しているのを目にしてきました。モルトウイスキー市場は世界中で大きく成長を続けています。ウイスキーブーム以前から開催しているこのイベントは、これからもモルトウイスキーの普遍的価値をご提案してまいります」

オープンと同時に、会場はウイスキーの甘い香りで満たされた。各社カウンターには熱心なゲストが列をなし、思い思いに試飲をしながら出展社の説明に耳を傾けている。

 

人気ステージプログラムと限定品抽選販売会

 

ステージプログラムは、プロフェッショナルの解説を聞きながら個性的なウイスキーをテイスティングできるチャンス。本場スコットランドからもたくさんの関係者が来日した。

2006年から「モダンモルトウイスキーマーケット」を開催している三陽物産社長の岡田浩幸氏。「モルトウイスキーの普遍的価値を伝えたい」というイベントの目的は今も変わっていない。

注目のステージプログラムにまず登壇したのは、サントリースピリッツ5代目チーフブレンダーの福與伸二氏。ビームサントリー社のウイスキークオリティアドバイザーも兼任する福與氏が、アイラ(2種類)、ハイランド、日本のスモーキーウイスキーを飲み比べしながら、フェノール値だけでは計れないスモーク香の魅力を解説してくれた。

モルトウイスキーの本場スコットランドからも一流の業界人たちが来日している。グレンアラヒーのデービッド・キアー氏は、元ベンリアックのビリー・ウォーカー氏が手がける「グレンアラヒー」について詳細に解説。モリソン・マッカイのケニー・マッカイ氏は、独立系ボトラーがシングルカスクを商品化するまでの裏話を楽しく披露した。同社にとって、日本は最大の海外市場であるという。輸入酒市場の成熟を裏付ける事実だ。

またインターナショナルビバレッジのアジア担当開発部長を務めるマット・ライト氏は、このたび刷新された「オールドプルトニー」のラインナップを紹介。セミナー参加者は、来年1月にお目見えする新しいウイスキーを一足先に味わう特権を喜んだ。

さらにモエヘネシーディアジオのMHDシングルモルトアドバイザーを務めるロバート・ストックウエル氏は、グレンモーレンジィの最新ボトルについて解説。エレガントな酒質を生み出すスチルや、先進的な樽熟成の戦略について紹介した。

限定品抽選販売会の入札コーナーも相変わらずの人気である。コレクターにはおなじみ「マッカラン」「山崎」「イチローズモルト」の限定品だけでなく、厚岸蒸溜所の「ニューボーン」といったフレッシュな顔ぶれも注目を集めた。

人気過熱による原酒不足が懸念されるなか、世界のウイスキー業界は新しいメーカーや商品の登場で発信力を拡大している。今年の「モダンモルトウイスキーマーケット2018」の入場者数は、昨年よりも200人多い1700人。来年も同時期に開催される予定だ。

 

 

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