次世代のスタンダード、「ダブルカスク」を解剖する
ファン待望の新ボトル「ザ・マッカラン ダブルカスク12年」の発売に合わせ、ザ・マッカランのマスターディスティラー、ニック・サヴェージ氏が来日した。比較テイスティングを軸に、ザ・マッカランが誇る樽熟成を分析。
文:WMJ
1824年以来の伝統を誇るザ・マッカランのラインナップに、このたび新しく加わったのが「ザ・マッカラン ダブルカスク12年」だ。今日は話題の新ボトルをマスターディスティラーのニック・サヴェージ氏とともに味わってみよう。サヴェージ氏は、ウイスキーの味わいを守る「究極の管理者」として、昨年よりザ・マッカラン全商品の品質保証を担っている人物である。
ザ・マッカランの個性は、数あるこだわりの総和から導き出されるとサヴェージ氏は語る。そのひとつが、濃厚で芳醇な風味を生み出すスペイサイド最小のポットスチル。そこから流れ出すスピリッツは、アルコール度数の誤差2%程度という厳密な「ファイネストカット」によって重厚なフルーツ風味やモルト感が確保される。
事実、サヴェージ氏が本国から持参したニューメイクスピリッツを味わうと、フルーツとモルトを凝縮したような力強い風味に驚いた。このようなフルボディの品質にこだわるのは、熟成時に極めて華やかなオーク樽の風味を授けるためだとサヴェージ氏は説明する。スピリッツの風味が軽すぎるとオーク由来の特性に圧倒されてしまうので、ザ・マッカランのスピリッツにはひときわしっかりとしたボディが必要なのである。
伐採から熟成まで、徹底した樽の自社管理で最高品質を維持
「ウイスキーの風味の8割は樽由来です」と、ニック・サヴェージ氏は断言する。ザ・マッカランが、樽材のライフサイクルを完全に自社管理している理由はここにある。使用する代表的な樽材は2種類あり、そのひとつがアメリカンオーク。樹齢約70年で収穫可能になり、木目がよく詰まった理想的な樽材だ。ザ・マッカランのウイスキーに現れるバニラ、レモン、ココナッツなどの風味はこのアメリカンオークが由来である。主に米国オハイオ州で伐採され、乾燥後に大西洋を越えてスペインのボデガ(樽工房)に送られる。
もうひとつの樽材であるヨーロピアンオークは、収穫まで約100年と成長が遅いため、アメリカンオークより希少な木材と認識されている。タンニンがアメリカンオークの5倍もあり、ウイスキーにレーズンなどのドライフルーツ風味、ジンジャーのようなスパイス、そして濃い琥珀色を授ける。
ボデガで樽組みされたオーク材には、重要なトースト工程が待っている。直火で焦がすチャーとは異なり、じっくり時間をかけて熱を加えるのがポイントだ。ザ・マッカランはトーストの温度、時間、湿度なども事細かに規定している。その後、ヘレスで18カ月ほどシェリーを貯蔵してシーズニングを済ませた後、ようやくスペイサイドまで輸送されてスピリッツが樽入れされるのである。
ニック・サヴェージ氏の仕事には、ザ・マッカランで熟成されている原酒のモニタリングも含まれる。その数、実に28万樽。1年で全体の25%をサンプリングするので、大変なコストと労力を要する業務だ。典型的なサンプリングのタイミングは、6ヶ月、8年、10年、12年の4回だという。6カ月目は樽の品質を確認するため。8年目は原酒のタイプごとに振り分けるため。10年目にはプロトタイプのバットを作り、12年目にはボトリングする全樽をあらためて官能評価する。
2つの世界の出会いをテイスティングで実感
新発売の「ザ・マッカラン ダブルカスク12年」は、アメリカンオークのシェリー樽原酒とヨーロピアンオークのシェリー樽原酒をブレンドしている。今回のテイスティングは、この2つの原酒を使用した「ザ・マッカラン ファインオーク12年」と「ザ・マッカラン シェリーオーク12年」の違いを踏まえ、両者の魅力を取り入れた「ザ・マッカラン ダブルカスク12年」の風味を分析するのが目的である。
まずはアメリカンオークで熟成した人気の「ファインオーク12年」を味わってみる。香りはバニラやシトラス。ザ・マッカランのなかでもフレッシュで軽やかなタイプだが、しっかりと深みもある。口に含むと、バニラやバタースコッチのようなまろやかさ。水を入れるとさらに柑橘系の風味が開き、バニラ風味も相まって非常に爽やかな印象になる。サヴェージ氏が解説する。
「甘くフルーティで、レモネードやクリームソーダのような味もあります。夏の日に飲みたい爽やかなウイスキーですね」
次はヨーロピアンオークで熟成した定番の「シェリーオーク12年」だ。冒頭からドライフルーツとジンジャーのあたたかな香り。口に含むと舌触りは分厚く、レーズンやイチジクのようなドライフルーツ風味がある。水を加えるとジンジャーの刺激が丸みを帯び、ドライフルーツやチョコレートのような甘味が広がる。
「こちらはファインオークとは対照的に、リッチであたたかな風味が特長。冬の暖炉脇で味わいたくなるようなウイスキーです」
いよいよ「ダブルカスク」の番である。グラスに鼻を近づけて、最初に感じるのはうっとりするようなハチミツの香り。バタースコッチや柑橘の背後に、かすかなジンジャーを感じる。口に含むとバニラ風味が広がるが、背後には依然としてジンジャーのスパイスがある。加水することでそのジンジャー風味は和らぎ、ハチミツや柑橘の風味が強調される。余韻は甘く、そして長い。
「2種類のオークの魅力を持ち合わせた、贅沢なウイスキーだとおわかりいただけたことでしょう。バランスが抜群なので、オンザロック、ソーダ割り、水割りなど、あらゆるスタイルで美味しく味わえます」
アメリカとヨーロッパで生まれ育ったオークの香りが溶け合い、新しい繊細な風味が生まれる。
「次世代のスタンダードとして生まれた新しいウイスキーです。これからはファインオーク、シェリーオーク、そしてダブルカスクをトリロジー(3部作)と考え、自分のお好みで存分にお楽しみください」
ザ・マッカラン ダブルカスク12年
※価格は販売店の自主的な価格設定を拘束するものではありません。 |
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