メーカーズマーク ディッピングセミナーレポート
メーカーズマークの証ともいえる赤い封蝋。12月18日(水)、ウイスキーヒルズの行われている六本木ヒルズにて、この封蝋を体験させてくれる「メーカーズマークディッピングセミナー」が開催された。
赤いトップが目印のメーカーズマーク。ウイスキーファンならご存知であろう、1本1本手作業で赤い封蝋が施されており、ずらりと並んだボトルの中でも同じ形のものはひとつとしてない。作業をするスタッフによって、斜めになっているものや蝋がたっぷりかかっているものなどの違いもある。メーカーズマークの愛好家はその違いまでも楽しんでいるという。
これまでは、どのようにその作業が行われているかは現地蒸溜所へ行ってみるほかなかったのだが、今回メーカーズマークのこだわりを知るというコンセプトのもと、実際に封蝋を体験できるセミナーが行われているのである。通常はバーテンダー・バーオーナー向けに開催されているとのことだが、今回はプレス向けということで参加させていただいた。
セミナーはまずメーカーズマークの特色の説明から。
バーボンはマッシュビル(レシピ)の51%以上80%未満でトウモロコシを使用する規定がある。それ以外の49%にどんな穀物をどんな割合で組み合わせるかがバーボンの個性につながっている。大麦麦芽を用いてシングルモルトウイスキーをつくることが多いスコッチやジャパニーズに比べると、興味深い特色である。
その中で、メーカーズマークと他のバーボンとの一番の大きな違いは、冬小麦の比率が高いことである。小麦のパンとライ麦のパンで比較すると分かりやすいが、小麦のパンでは柔らかさや甘みがあり、ライ麦パンは独特の風味やスパイシーさがある。メーカーズマークはこの小麦由来の甘くスムースな味わいにこだわっているのだ。
他にも樽詰めの際アルコール度数を低めにすること(樽の成分がスピリッツに影響しすぎるのを防ぐため)、樽のチャーリングや貯蔵中のローテーションなど(詳しくはマスターディスティラー グレッグ・デイビス氏のインタビュー参照)、メーカーズマークのこだわりは随所に至る。
テイスティングの後、「ディッピング」体験がスタート。
溶かしたワックスは200度と高温なため、グローブ、アームカバー、エプロンにゴーグルと重装備で行う。
手順としては、まずボトルを逆さに持ち、ネック部分の窪みの下1センチのところまで溶けたワックスの中につけ込む。
手早く引き上げて、ボトルを回転させながら垂れるワックスを切る。
そしてボトルを立てて、ワックスがゆっくりと垂れながら冷えて固まるのを待つのである。
一見すると簡単そうな作業だが、味のある形をつくるのがなかなか難しい。手早く回転させないと固まってしまうが、あまり早く切ってしまうと下に垂れるほどの量がなくなってしまう。また、気泡が入っても見栄えが良くない。
本誌記者MとOの作品はいずれの点をとっても合格点とは言い難い…機会があれば再挑戦してみたいと思ってしまった。
このようにして、最後の最後まで手を抜かず、蒸溜所から大切に世に送り出されるメーカーズマーク。1952年から変わらぬレッドトップの佇まいには自信が溢れているようだ。
前述したとおり、このセミナーは本来バーテンダー向けなので、あなたの行きつけのバーにもマスターが封蝋したボトルが飾られているかもしれない。そのボトルを見かけたら、ぜひその体験談と共に手づくりのこだわりが詰まったメーカーズマークを味わってほしい。