ウイスキー新勢力【4. 西オーストラリア 後半/全2回】

April 9, 2015

 西オーストラリア州の蒸溜所「グレート・サザン・ディスティリング・カンパニー」。後半では、地元の産物を十二分に活用した、この地ならではのウイスキーづくりの様子をレポートする。

【←前半】

西オーストラリア州は、オーストラリアで初めてヨーロッパの自由移民が住みついたところだ。
その植民地には後に犯罪者も送られてきたが(ここのウイスキーがその名をとった、「ライムバーナーズ」…石灰焼成場に配属された人々を含めて)、最初に移住してきた人々は自らの意思でやってきた。勇敢に快適な文明を捨ててきた人々が、厳しい自然環境の地で作り上げた町。これなら、蒸溜所の方針に土地柄が猛烈に出ているのもそれほど意外ではない。

オーストラリアの都市の中では温暖とされる海洋性の気候。そのほかにもこの蒸溜所の個性を形作っているのは、材料− 地元産の穀物とピートだ。また、水は地下の石灰岩帯水層と雨水貯留タンクの両方からとり、蒸溜所で使用するエネルギーの多くは、隣接するキング・ジョージ湾の沖合にある風車から得る。

さらに樽の選択にも地元の影響が出ている。
輸入されたバーボン樽は他の蒸溜所とも同じだが、グレート・サザン社が使うオークのほとんどは、オーストラリアの酒精強化ワイン業者が供給している。
近くのマーガレット・リバー流域は有名なワイン地帯だ。ここから、オーストラリア産のポート、シェリー、マスカット、トカイが入っていた樽を調達する。
蒸溜所の母屋の一画、驚くほど涼しい熟成室に置かれた樽類の中に、これらのあまり見慣れない形の樽がかなり混じっていることに気がついた。

オーストラリアの法律では、ウイスキーはオーク樽で2年間熟成しなければならないが、グレート・サザン社のラインナップはもっと長く、最大4、5年熟成することが多い。涼しく温和な気候が樽の影響を引き出せば、ウイスキーの完成。
私が試したウイスキーはどれもしっかりしていて、フルフレーバーだった。グレート・サザン社はシングルカスクしかリリースせず、それぞれがその樽独特の個性を持つウイスキーだ。ある意味、実に理に適っている― 最高の地元の産物をウイスキーという形でボトルに閉じ込めることは、蒸溜所の強い地元への愛と誇りと完璧に調和しているのだから。

テイスティングコメント

タイガー・スネーク バッチ4
蒸溜所周辺の砂地に生息する毒蛇の名前をとった、サワーマッシュ・バーボン・スタイル。
香り:カラメル、カイエン、シリアル
味:キャンディードコーン 、甘いスパイス、豊かな口当たり
フィニッシュ:温かさが続く、さらにスパイス

ライムバーナーズ  バレル M76
バーボン樽で熟成してから、オーストラリア産ポートカスクでフィニッシュしたシングルモルト。
香り:モルトローフ、トリークルが少し、核果
味:豊かで、スパイシー、ソフトなタンニン、赤砂糖
フィニッシュ:フルーティで温かくなる

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