ニッカがマンサニーリャ樽フィニッシュのシングルモルトを数量限定で新発売
ニッカのシングルモルトウイスキー「余市」と「宮城峡」から、マンサニーリャ樽でフィニッシュを施した限定品が新発売された。佐久間正チーフブレンダーと一緒に、希少な味わいを体験してみよう。
文:WMJ
力強く重厚な「シングルモルト余市」と、華やかでフルーティーな「シングルモルト宮城峡」。日本を代表する2つのシングルモルトウイスキーも、国内外の急激な需要増大で出荷調整を強いられている。ニッカウヰスキーは増産計画を進めているが、その効果が現れるまでには時間がかかるだろう。
だがニッカは決して守りに入った訳ではない。昨年は2つのシングルモルトをそれぞれモスカテル樽で後熟した「モスカテルウッドフィニッシュ」を限定発売し、ほぼ1ヶ月で完売。そして今年も、初めてマンサニーリャ樽で後熟した新しい限定商品を送り出してきた。
酒精強化ワインの樽でウイスキーを貯蔵すると、独特のフルーティーな甘味を含むさまざまな効果が加わる。昨年のモスカテルは甘口だが、今回のマンサニーリャは辛口のドライシェリーだ。ニッカウヰスキーの佐久間正チーフブレンダーが、このユニークなウイスキーを発売するに至った経緯を明かす。
「商品化の予定は特に考えず、2015年からさまざまな酒精強化ワインや蒸溜酒の樽で効果を試してきました。ニッカで使用するシェリー樽はオロロソやペドロヒメネスが主体で、フィノタイプのマンサニーリャ樽を使用するのは初めてのチャレンジでした」
マンサニーリャを産出するスペイン南部のサンルーカル・デ・バラメーダは、佐久間氏にとっても思い入れが深い場所であるという。
「樽の状態をチェックするため、これまで何度も訪れました。バルに出かけてイカのフライやエビのグリルなどを食べながら、ワイン代わりに飲むマンサニーリャの味は格別です」
新しいウイスキーのテイスティングを始める前に、佐久間氏が用意してくれた冷たいマンサニーリャを味わってみる。キリリと爽やかな辛口で、上品なフルーツ香と樽由来のタンニンが心地よい。大西洋に面したサンルーカルは他のシェリー産地よりも涼しく、フィノタイプの中でも穏やかな味わいなのだ。
近年、ウイスキーの熟成に使用されるシェリー樽は、3年ほどシェリーを貯蔵して「シーズニング」したタイプが主流になっている。しかし今回ニッカが使用したのは伝統的な「ソレラ樽」だ。ソレラはシェリー特有の熟成システムで、上下に積んだ樽を動かさずに中身のお酒を移動させ、品質の一貫性を保つ方法であると佐久間氏が説明する。
「ソレラシステムで、50年以上マンサニーリャを熟成したシェリーバットを使用しました。樽材はアメリカンホワイトオーク。この希少な樽で、通常の『余市』と『宮城峡』をさらに18か月間貯蔵したのが今日ご紹介するウイスキーです」
フィニッシュの効果をテイスティングで実感
いよいよ新商品のテイスティングである。テーブルにはおなじみの「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」も用意されている。マンサニーリャ樽でフィニッシュすると、どんな変化が現れるのかを飲み比べながら検証してみよう。
まずは「宮城峡」から。定番の「シングルモルト宮城峡」は、爽やかなフルーツ香が特徵だ。モルト、バニラ、シェリーなどの香味要素に加え、ライトピート原酒の影響でかすかにスモーキーでもある。口に含むと舌の上でフレーバーが開き、華やかな樽の余韻がじんわりと続く。
一方の「シングルモルト宮城峡マンサニーリャウッドフィニッシュ」は、定番品に白ワインを思わせる軽やかな香りが加わっている。ドライフルーツの香りと、ココナッツやミルクチョコレートを思わせる甘みのハーモニー。ウイスキーを味わいながら佐久間氏が解説する。
「同じレーズンでも、サルタナレーズンのようなフレッシュな味わいが強まっています。定番品より1年半も長く樽に貯蔵されているので、樽由来のビターな感触もさらに増していますね」
次は余市の番だ。定番の「シングルモルト余市」は、同じフルーツ香でもピーチやパパイヤのようなトロピカルフルーツの印象が強い。直火式スチルらしい麦の香ばしさもあり、口に含むと力強いピート香が鼻孔へ抜けていく。
「シングルモルト余市マンサニーリャウッドフィニッシュ」は、そんな余市の特性をしっかりと残しながら、軽やかなフルーツ香を増強した印象だ。フルーティーな甘さとコクに、おなじみのピート香がバランスよく調和している。樽由来のビターな余韻もいっそう力強い。
「マンサニーリャ自体は甘くないのに、ワインの香りによる相乗効果で定番品よりも甘く感じます。甘酸っぱい香りは、例えていうならフルーツを乗せたショートケーキ。焚火のようなピートの余韻もしっかりと拮抗しています」
ニッカが誇るシングルモルトの魅力は維持しながら、フィノシェリー特有の軽やかな甘みとビターな樽香が加わったウイスキー。それぞれのユニークな個性を引き出しながら、あくまでバランスに優れているのが「マンサニーリャウッドフィニッシュ」の魅力だ。
「繊細な風味の調和を保つため、冷却ろ過はおこなっていません。さまざまな度数を検証した結果、フィニッシュの特色がもっとも適切に表現できる48%でボトリングしました」
「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」に、なめらかな甘さやビターな味わいを付与したフィニッシュの妙。スペイン南部で50年以上の時を過ごした樽が、これまでにないウイスキーの魅力を引き出してくれた。シングルモルトの愉しみがいっそう広がる限定商品である。
シングルモルト余市
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シングルモルト宮城峡
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アルコール分:48%
容量:瓶700ml
発売日:2018年9月26日(水)
価格:オープン価格(参考小売価格:税別15,000円)
販売数量:各4,000本
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