特別感のある乗り物、嗜好品、調理用品などで、ライフスタイルとの親和性を訴えるウイスキーブランドも多い。3回シリーズの第2回目。

文:ライザ・ワイスタック

 

マッカランは、2021年7月からベントレー・モータースとの提携を世界規模で開始した。ベントレーもまた、新型フライングスパーハイブリッドの発表会場にマッカラン・エステートを選んでいる。最近マッカランは、ビジターのために「スペイサイドの特別ジャーニー」と呼ばれるエクスペリエンスも用意した。このサービスには、マッカラン・エステートを特別なマッカラン仕様のベントレーに乗ってクルーズするというサービスが含まれている。 マッカランのブランドディレクター、ポール・コンドロンは次のように説明してくれた。

「双方のブランドから、オープンに知見を交換したいという本気の取り組みが引き出されています。特に大切にしているのは、サステナビリティの追求に関して学びあう機会。カーボンニュートラルを目指すベントレーは、電化を大きく推進し、サステナブルな原材料を使用することで進化を遂げています。マッカランでも485エーカー(約2平方キロ)の所有地を未来の世代へ受け継ぐために緑化し、パッケージの工程を刷新して地域コミュニティへの還元やサステナブルなサプライチェーンの構築を推進しています。ベントレーとマッカランには、双方の目標を互いに加速させてくれる豊かな共通項があるのです」

ジャックダニエルとインディアン・モーターサイクルは、いかにもアメリカの自由でワイルドなライフスタイルを思い起こさせる組み合わせだ(メイン写真はマッカランとベントレーのコラボ)。

乗り物メーカーとの提携には、ジャックダニエルも乗り出している。そのアプローチやキャンペーンには、スコッチと異なった視点と狙いもあるようだ。2021年10月、ジャックダニエルはインディアン・モーターサイクルとの提携関係が7年目に入ったことをアナウンス。ジャックダニエルは米国で初めて公式登録された蒸溜所であり、インディアン・モーターサイクルは米国で初めて設立されたオートバイのメーカーである。

この提携関係から、2022年には限定モデルのオートバイが発売される予定だ。シートにジャックダニエルライのロゴがステッチされ、ステップボードには同じくジャックダニエルライのロゴが刻印されている。そしてフェンダーには、「ボトルとスロットルは相容れない」というメッセージ。もちろん「飲んだら乗らない、乗るなら飲まない」というドライバーの責任を喚起するものだ(自動車ブランドと提携するウイスキーブランドは、例外なく同様のメッセージを発信している)。

ブラウン・フォーマンでグローバルライセンシングマネージャーを務めるトビー・ラウシュが説明する。

「ジャックダニエルとオートバイには、本当によく似たDNAが宿っているんです。それは自由に生きて、大胆に力強く行動して、旅のような日常を楽しもうというメッセージ。インディアン・モーターサイクルとの提携関係は、長期間にわたって続いています。でも飲酒運転の問題は重く認識しているので、ジャックダニエル側にはいつも緊張感がありますよ」

限定モデルの価格は、36,999ドル(約420万円)となかなか高額だ。しかし自宅ガレージに愛車をコレクションする人以外のために、各ブランドはもっとリーズナブルな各種コラボ商品も開発している。
 

ライフスタイルブランドとして差別化を狙う

 
ジャックダニエルと同じくブラウン・フォーマン傘下のウッドフォードリザーブは、台所用品と家具の人気ブランドチェーンとして知られるウィリアムズ・ソノマと提携して、限定のカクテルシロップを作った。普通なら他のバーボンと一緒に棚を飾っていそうなウッドフォードリザーブだが、ソノマのフォロワー層にとっては特別な意味を持つブランドとして認知されている。

フード、ドリンク、キッチンウェア、調理器具は、互いにコラボレーションしやすい近接した分野である。アイリッシュウイスキーのスレインは、カリフォルニア州オークランドにある「レッド・ベイ・コーヒー」と手を組んで、昨年1月のアイリッシュウイスキーデイ専用ブレンドを特別に開発した。

バーボンとバーベキューのイメージは親和性が高い。ノブクリークはグリル用品とのコラボで独自のポジショニングを狙う。

レッド・ベイ・コーヒーの創設者であるキーバ・コンテは、「ウイスキーで感じるパワフルなインパクト」やクリームの濃厚さに対抗しうる力強いブレンドを苦心の末に作り上げている。コンテはコラボレーションの経験が豊富で、配信サイトのNetflixや人気ハンバーガーチェーンのシェイクシャックのために特別なブレンドコーヒーをデザインしたこともある。今回のスレインについても、コーヒーとの相性は抜群だと感じているようだ。

「私たちはコラボレーションが大好きで、それがコーヒーブランドの素晴らしさだとも思っています。人と人が集まって近況を報告し合ったり、おしゃべりしたりするきっかけを作る力がコーヒーにはあります。ウイスキーとのコラボレーションも、クリエイティブな共同作業という点では同じ。レッド・ベイが打ち出しているコーヒーの精神文化とぴったりのコラボ相手です。コーヒーショップの多くは、アーティストなどのクリエイティブなバックグラウンドを持つ人々によって運営されています。これは偶然ではありません。思想家や創造者たちがコーヒーの世界に集まってくるのは、そこにある文化に惹かれているのです。この伝統はもう何世紀も続いてきました。アイリッシュウイスキーとのコラボがこれほど自然で、意欲を刺激するようなプロジェクトになったのも当然のことなのです」

ビームサントリーのノブクリークは、また違った方向性のコラボ相手を模索していた。昨年夏に手を組んだのは、ボードスミスというまな板メーカー。特に職人技で仕上げた精肉店用の高品質まな板で定評がある。このボードスミスが、著名なブランドのウイスキーを熟成した樽の板でグリル用のボードを商品化した。

ビームサントリーのシニアPRディレクターを務めるダン・コーエンは次のように語る。

「お酒が好きな人は、グリル料理が好きな場合が多いとわかっています。だから似たようなものを嗜好する人々に向けて、戦略的なパートナーシップを組みました。意外性を感じさせながら、肉をグリルする楽しい時間とジャックダニエルを関連付けてもらうための面白いアプローチ。これも一種のエンゲージメントなのです」
(つづく)