ピートのマジック、ラフロイグ探訪

August 7, 2015

 


今でも古くからのフロアモルティングを継承し、世界屈指の個性的なウイスキーで知られるアイラ島のラフロイグ蒸溜所をご紹介。


文:ガヴィン・スミス

ラフロイグは、間違いなく世界屈指の個性的なウイスキーだ。その評価は真っ二つに分かれるだろう。強烈な磯の匂いとフェノール香を受け付けない人もいれば、最愛のシングルモルトのひとつに数える人もいる。明らかなのは、この個性を全面に押し出す方針が間違っていないということだ。ラフロイグは世界一の売り上げを誇るアイラモルトであり、2013年にはシングルモルト売り上げ世界第9位にも輝いている。
ラフロイグには、世界中に同志がいる。21年前に結成された「フレンズオブラフロイグ(FOL)」の登録者数は、およそ190カ国の669,000人。FOLに入会すれば、ウイスキーの優先購入権や限定ボトル購入権などの特典がつく。また毎年1杯分のラフロイグを賃貸料として、蒸溜所が所有する土地1平方フィート分の借地権を生涯にわたって手に入れられる。ラフロイグの個性を愛する著名人の一人がチャールズ皇太子だ。1994年、ライフロイグ蒸溜所は王室御用達に指定されている
今年は、ドナルド兄弟とアレクサンダー・ジョンストンが酒造免許を取得し、アイラ島南岸でラフロイグを創立した1815年から数えてちょうど200周年。ジョンストン家の末裔であるイアン・ハンターが亡くなる1954年まで、ラフロイグは長きに渡って同家が経営した。イアン・ハンターから、ラフロイグの舵取りを引き継いだのがベッシーことエリザベス・ウィリアムソンだ。イアンの優秀な片腕だったベッシーは、ウイスキー史上極めて稀な女性の蒸溜所長となった。
ベッシー・ウイリアムソンは1972年に引退するが、最後の10年は蒸溜所の所有権をシーガー・エヴァンス社に譲っている。1975年にはビール醸造で成功したホワイトブレッド社、1989年にはアライド・ディスティラリーズ社、2005年にはフォーチュン・ブランズが買収し、2014年にフォーチュン社のスコッチウイスキー部門を管轄していたビーム・グローバル・スピリッツ&ワイン社の株式を取得したサントリーホールディングス株式会社がラフロイグを傘下に収めた。

水から辿る究極の蒸溜所ツアー

同じサントリー傘下のアイラモルトであるボウモアは、ラフロイグのライバルと目されることもある。だがスタイルの相違を考えれば、両社は明確に競合はしていない。ラフロイグの強烈なピートと磯の香りが、ボウモアと趣を異にするからである。両蒸溜所には共通点もある。それは今でも古くからのフロアモルティングを継承していることだ。アイラ島にある8箇所の蒸溜所で、自家製麦をおこなっているのは3箇所。ラフロイグが有する4つのモルティングフロアでは、同蒸溜所で使用する全モルトの約15%を生産している。自家製麦したモルトはフェノール値40~60ppmのヘビーピートだが、蒸溜所外で製麦したモルトは35~45ppmである。 現在ラフロイグの舵を取るジョン・キャンベルは、伝説的なイアン・ヘンダーソンから2006年に経営を引き継いだ。アイラ島で最年少の蒸溜所長であると同時に、アイラ島出身者では初めての蒸溜所長として歴史に名を刻んでいる。
製品ラインナップには定番の10年を始め、クオーターカスク(小ぶりなクオーター樽による後熟で熟成速度を上げたタイプ)、セレクトカスクなどがある。ウイスキーの風味も驚くべき体験であるが、ラフロイグ蒸溜所もまた一度は訪ねてみる価値がある場所だ。ビジターセンター長のヴィッキー・スティーブンスが語る。
「ウイスキーへの関心も、知識も異なるお客さまに合わせて、多彩なツアーのオプションをご用意しています。テイスティングセッションはたっぷり1時間以上。ガイドと施設見学はマンツーマンで実施します。製造現場ではピートやフロアモルティングなどのウイスキーづくりも体験でき、麦芽汁やウォッシュの試飲もあります。対話を重視した独自のビジター体験を、ここ5~6年で完成させてきました」
所要4時間半の「水からウイスキーへ」(料金は85英ポンド)は、ラフロイグのすべてが体験できる究極のツアーだ。まずはラフロイグ蒸溜所が使用する水源まで散歩して、ピクニックランチと共に原料水で割ったウイスキーを1~2杯。ピート切り出し体験では、ピートが見かけよりもかなり固いことがわかるだろう。蒸溜所に戻るとモルティングフロアで麦芽を裏返す体験ができ、さらに総合的な蒸溜所ツアーが続く。最後はメイン貯蔵庫の樽からさまざまな種類のラフロイグを試飲。ボトル詰めしたおみやげのウイスキーは、自宅に持ち帰ってヴァリンチ(試飲用スポイト)でも楽しめる。
ラフロイグの蒸溜所ツアーは、クセのある風味に魅せられた世界中のウイスキーファンに大人気だ。
ラフロイグのプロフィール
モルト:フェノール値40~60ppm(自家製麦)、35~45ppm(製麦業者より購入)
マッシング:完全濾過マッシュタン(5.5t)
発酵:ステンレス製ウォッシュバック6槽(各槽53,000L、53時間発酵)
蒸溜:初溜釜3槽(各10,400L)
再溜釜4槽 (4,900Lが3槽、9,400Lが1槽)
年間生産量:3,300,000L

日本版スペシャルサイト
ラフロイグの歴史、商品ラインナップ、おすすめの飲み方、フレンズオブラフロイグへの入会方法などの詳細情報が、サントリーのラフロイグスペシャルサイトでご覧いただけます。

 

 

WMJ PROMOTION

カテゴリ: Archive, features, TOP, 最新記事, 蒸溜所