Italian Legend ― 進化するサマローリ【後半/全2回】
次世代へシフトしようとしている、イタリア最古のボトラーズ「サマローリ」。インタビュー後半ではその独特なラインナップと45周年の転機について伺う。
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――ボトリング時期の見極め以外にも、樽を購入する際の選別も熟練がいるかと思いますが。
フランチェスコ氏 ええ、そのために7月に、スコットランドのあちこちの蒸溜所へ行きましたよ。サンプリングをするだけではなく、その蒸溜所の方々とじっくり話しました。樽の状態や今後のプランを聞けましたし、また逆に我々のボトルに対しての意見も聞かせてくれました。
蒸溜所からサンプルを送ってもらってイタリアでテイスティングすることも多いですが、現地で行うことは非常に重要ですね。幸い我々はサマローリ氏がこれまで築いてくれた信頼関係がありますから、通常であれば手に入れられない樽を購入することができたりします。このような関係はすぐにできるものではありませんからね。
――そして選んだ樽をボトリングする際、アルコール度数は基本的に45度のようですが、それはなぜでしょう?
フランチェスコ氏 わが社の歴史においていくつか大きな区切りがあったのです。サマローリ氏はイタリアでウイスキーを広める時に、カスクストレングスでボトリングしていました。樽からの影響、自然な状態を重要視していたんです。80年代までそのようにしていましたが、その後人々にシングルモルトを教える時に、同じ度数であると違いが分かりやすいことに気づき、ベストと思われる45度でのボトリングに統一したのです。
アントニオ氏 現在はカスクストレングスも度数調整してのボトリングも、両方行っています。古い樽になると、加水してしまうとせっかくの良さが失われてしまうこともありますから。もちろん加水したほうが本数を多く販売できますからトクなのですが(笑)、樽にはそれぞれの原酒が一番引き立つ度数があるので、それをきっちり守るべきだと思います。必要に応じて使い分けていますよ。
――シングルカスクとブレンデッド、それぞれ「サマローリ」ならでのこだわりはありますか?
フランチェスコ氏 1992年頃、サマローリ氏は自然環境が大きく変化していることに気づきました。空気、水…汚染は広がっていました。ズッキーニだってもう以前のズッキーニとは違っているんですよ! そこでサマローリ氏は、自然なウイスキーを楽しんでもらえるようにということに注力しました。樽ごとの個性を生かすシングルカスクですね。
光栄なことに、我々のシングルカスクのボトルは非常に評価されていますが、様々な年代の樽をブレンドしてつくりあげるスタイルも、幅広いラインナップとユニークさで、とても好まれるようになりました。
さらにアイラ、スペイサイド…とエリアごとの特徴を生かしたブレンデッドモルトなどもつくっています。そのような独創的な視点と高いクオリティを特徴とした、いろいろなタイプのウイスキーをリリースしています。
――なるほど。その多彩なラインナップの中で、とてもユニークな「エボリューション」がありますが、こちらのコンセプトを教えてください。
フランチェスコ氏 「エボリューション」は様々な原酒をパズルのように組み合わせたブレンデッドモルトウイスキーです。
長期熟成の原酒から得られる華やかさと、若い原酒から得られるパワーを調和させることが目標ですね。全く異なる個性を持つ原酒をブレンドし、それぞれの良さを最大限に生かす。これは一朝一夕にできることではなく、現在の品質に辿りつくまで20年を要しました。現在では45以上のシングルモルト原酒…モートラック1957からジュラ1997で構成されています。これはソレラスタイルではなく、原酒を少量ずつ組み合わせてから熟成させています。今後もリリースしていきますが、また違った表現になるでしょうね。現在アントニオがそれを受け継いで挑戦しています。来年以降は2013年にブレンドしたバッチの第2弾から第4弾をリリースし、次のバッチはおそらく2016年頃ですね。
アントニオ氏 「エボリューション」はその名の通り進化しますから、その過程を楽しんでいただきたいですね。もちろん、私もこれから進化していきますよ(笑)。
――応援しています! さらにサマローリ社自体も進化発展して、今年45周年だそうですね。おめでとうございます。
フランチェスコ氏 ありがとうございます。サマローリ氏が74歳になる10月に、記念イベントを行います(WMJ註:インタビュー時は9月)。世界中のウイスキー業界の様々な方をお招きしています。
――とても貴重なボトルも出されるとか。
フランチェスコ氏 ええ、ブナハーブン1968…創業当時のヴィンテージのモルトなどですね。カスクストレングスなので96本しかとれませんが。若いものではブルックラディ2002、これはオーガニック。彼らは非常に環境を意識したウイスキーをつくっていますから、我々のコンセプトにもぴったりなんです。それからエボリューションの限定版。これも創業年の1968から我々の分岐点でもあった73、83といったヴィンテージのもので構成されていて、まさにサマローリの歴史ともいえるボトルです。
――それは素晴らしいですね! 話を聞いているだけでもうっとりしてしまいます。
では最後に日本のウイスキーファンにメッセージをお願いします。
フランチェスコ氏 日本は非常に重要なマーケットであると同時に、我々の情熱、ウイスキーの価値を理解してくれるファンがとても多く、ありがたく思っています。また日本を訪れる際には、皆さんとお会いできることを期待しています。
インタビュー後に行われた45周年記念パーティでは、社の中心がシルヴァーノ・サマローリ氏からアントニオ氏へ引き継ぐことが発表されたとのこと。今後はサマローリ氏の経験と知識を柱として、アントニオ氏がそれを発展させていくことだろう。大きな転換期を迎えた、サマローリの更なる進化が非常に楽しみである。