南アフリカのマスターディスティラー【後半/全2回】
前半ではジェームズ・セジウィック蒸溜所のマスター・ディスティラー、アンディ・ワッツ氏に南アフリカでの蒸溜について伺った。後半ではそのこだわりの製品に迫る。
――中核の「スリー・シップス」ブランドについて話しましょう。このウイスキーはいつ発売開始されて、今ではどれくらいの数のラインナップがあるのでしょう?
アンディ 「スリー・シップス」は 1977年に発売されました。当時、南アフリカではスコッチウイスキーが主流だったので、スコッチとは違うスタイルのウイスキーを導入するのは、実に勇敢なことだったと言えると思います。「スリー・シップス」はスコッチウイスキーと南アフリカ産ウイスキーのブレンドとしてスタートしました。その後、年月を経て私たちのストックも増え、十分に熟成したので、スコッチウイスキーの一部を置き換え、今では「スリー・シップス セレクト」と「スリー・シップス 5 年」 の大半が南アフリカで蒸溜、熟成したものになっています。
「セレクト」は入門向けで、ミキサーに最適な滑らかなブレンドです。「5年」と「バーボンカスク」は私たちのポートフォリオの中の位置という点では同等なのですが、味のキャラクターと製造方法は大きく違います。
――国際的な名声という意味で、「スリー・シップス 5 年」が2012年にWWA「ワールドベスト・ブレンデッドウイスキー」を獲得したことはブランドにとってどのような後押しになりましたか?
アンディ 賞はブランドの名前を高め、地元ウイスキーに対する認識を変える上で計り知れない効果がありました。興味深いことに、国際的な出版物や信望のあるライターたちが、私たちの努力とこの数年余りにわたる南アフリカでのウイスキーの目覚ましい進歩を称賛してくれました。
WWAでの受賞結果は「スリー・シップス」やほかの南アフリカ産ウイスキーが受けた中で過去最高の賞でしたが、私たちのウイスキーはこの10年にわたりISCやIWSC、コンクール・モンディアルなど幾つかの著明な国際コンテストで常にメダルを獲得しているんですよ。
――WWA2013で「ワールドベスト・グレーン」に選ばれた「ベインズ」を発売したとき、何故シングルモルトウイスキーではなくシングルグレーンにしたのですか?
アンディ 「ベインズ」の発売は2009年でしたが、その背後にある企画は 1990年代後半に始まっていました。アパルトヘイト完全撤廃によって欧州共同体が経済制裁を解除した事により、南アフリカが世界の一部に加わると、突如としてスコットランド以外の国のウイスキーも上陸し始め、選択肢が増えてきたのです。1994年の同法廃止以前にはなかったことでした。
私たちは消費者が何を飲んでいるのか、どんな人がウイスキーを飲むのか等を注意深く観察し、伝統的なスコットランドスタイルから離れたウイスキーを開拓する時が来たという結論に達しました。軽めのフレーバーのグレーンと適切な樽材を選択してウイスキーをつくる事が決定したのです。2009年の南アフリカ初のシングルグレーンウイスキーのリリースはユニークな事例のの再来となりました。2003年に開発、発表した「スリー・シップス シングルモルト10年」も南アフリカ初のシングルモルトだったのです。
――仕事とウイスキーを離れたら、どうやってリラックスしていますか?
アンディ 身体を動かすようにしています。ロードとマウンテンバイク両方のサイクリングを楽しんでいますし、まだクリケットもプレイしていますよ。1年おきに「ワールド・ゴールデン・オールディー・クリケット・トーナメント」に参加しているシニアチームに所属していて、最近オーストラリアの素晴らしいツアーから戻ったところです。
ゴルフもやりますが、もうめったに時間が取れません。蒸溜所を車で通過したら、地所内にある美しいダムでラインフィッシングをしている私を見かけるかもしれませんよ。スポーツ以外では、家族や友人たちと過ごす時間を楽しんでいますし、素晴らしい南アフリカ産ワインと一緒に食べる美味しいブラーイ(WMJ註:バーベキュー)が大好きです。
――ありがとうございました。今後もWWAや世界的なコンペティションで、ジェームズ・セジウィッグ蒸溜所のウイスキーを見かけるのを楽しみにしています。