ウイスキー樽で熟成した夢のビール
まだ世界のどこにもない、心が震えるほどにうまいビールをつくりたい。そんなサントリーの醸造家たちの夢が進化を続けている。シングルモルトウイスキー山崎の原酒樽で熟成した「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉」をソムリエと共に味わった。
文:WMJ
サントリーがビール事業に参入したのは、寿屋から社名を「サントリー株式会社」に変更した1963年のこと。1967年には他社に先駆けてびん生ビール「純生」を、1986年には麦芽100%の生ビール「モルツ」を発売し、2000年には「モルツ・スーパープレミアム」缶を限定発売、2003年に「ザ・プレミアム・モルツ」を定番発売した。日々の中で少し豊かな生活を演出する“ちょっとしたご褒美”として多くの人に支持され、2017年7月には累計販売本数が60億本を突破するなど、今ではプレミアムビールを代表するビールになっている。
サントリービール(株)の醸造家である秀島誠吾氏は、「世界一のビールをつくりたい」という想いを強く持っていた。コク、苦味、甘み、香り、余韻といった味わいが、波のように押し寄せては共鳴する。そんなオーケストラのような「多重奏」をビールで表現したいと考えたのである。2015年に誕生した「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム」は、完成までに10年の歳月を費やしたスーパープレミアムクラスのビール。深いコクとうまみが特長のダイヤモンド麦芽、苦味と香りのバランスが上品な欧州産アロマホップ、良質な天然水を使用し、麦汁の抽出には特別な「トリプルデコクション製法」を採用した。また銅製循環型ケトルを配備した「銅炊き仕込」で、やわらかい苦味、深いコク、ほのかな甘み、心地よい香りを生み出している。効率や生産性ではなく、純粋に「うまさ」だけを追い求めたビールだ。
しかし世界一を目指す醸造家たちには、まだまだ高い目標があった。「もうひとつの夢のビール」として、昨秋に完成させたのが「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉」(非売品)。5年を要したという開発の経緯について秀島氏が明かしてくれた。
「私たちが目指したのは、樽熟成することによって長い時間軸で愉しめるビール。さまざまな樽を試してきましたが、マスターズドリームに相応しい味わいはサントリーシングルモルトウイスキー『山崎』の原酒樽から生まれることがわかりました。それぞれに個性が違う樽の取り扱いは、今でもチャレンジです」
今日、このビールを一緒にテイスティングしてくれるのは、日本を代表するソムリエの佐藤陽一氏。2005年度の全日本最優秀ソムリエに選ばれた第一人者も、このビールの味を楽しみにしている。
「樽の影響で風味に多様性が生まれるのは、ワインとの共通点といえるでしょう。生産地のテロワールを意識させるところも似ています。今日は、このビールが時間の経過と温度の変化に耐えて、どんな風味の変化を見せてくるのか確かめたいと思います」
樽熟成から生まれた醸造家の夢を味わう
ついに夢のビールが運ばれてくる。樽熟成を経た色は「マスターズドリーム」よりもさらに濃厚だ。きめ細やかな泡といっしょに1口目を飲むと、芳醇な香りが花開く。味わいはどこまでも深く、満ち溢れるような余韻も印象的。これは明らかにゴクゴクと喉越しを楽しむビールではない。
ローストビーフなどの料理と合わせてみると、肉の旨みを引き立てながらビールの複雑な風味がさらに魅力を輝かせる。真剣な眼差しで味わっていたソムリエの佐藤氏が口を開いた。
「濃厚な割には、意外なほどすっきりとしてキレも良い。度数が高いのにアルコールの強さも感じません。でも口の中に入ってくる濃度はさすがです。木樽のタンニンが骨格を与えており、フルコースでメイン料理に合わせられる十分な力があります」
ゆっくりと飲んでも、豊かな香りや深いコクが衰えることはない。むしろ冷えているときとは違った表情で愉しませてくれるのが驚きだ。佐藤氏を真似てグラスをぐるぐる回し、再び現れた泡と一緒にゆっくり味わう。グラスに少しだけ残った高めの温度のビールが、これほど美味しいと感じたことはなかった。ここは佐藤氏も当初より関心を寄せていたポイントである。
「温度が高まってきても、風味が崩れないのに驚きました。酒質や水の良さを実感します。この8.5%という絶妙なアルコール度数は、最初から決めていたのでしょうか?」
秀島氏が笑顔で答える。
「そんなわけではありません。さまざまな検証を重ねながら、樽の影響力と釣り合いを取るために味わいの強いビールをつくって合わせるようになりました。アルコール度数も、理想のバランスを追求した結果です」生産量が極めて少ない「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉」は、残念ながら非売品。期間限定で味わえる数少ないチャンスが、現在開催中の「~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉プレゼントキャンペーン」である(下記参照)。
「山崎原酒樽熟成」以外にも日々研究と試行錯誤を続けているという醸造家の秀島誠吾氏。進化を続ける彼らのビールづくりに今後も注目だ。
~ザ・プレミアム・モルツ~ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉
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