SWAが示す姿勢【後半/全2回】

May 25, 2013

ウイスキーに熱心な方であれば、必ずどこかで聞いた事があるであろうSWAという名称。ではSWAとはどんな団体で、何をしているのか。その実態をお伝えする。

→SWAが示す姿勢【前半/全2回】

SWAの務めは、複雑で困難なものであり、政府や貿易団体と並んで世界をまたにかけ、時にはウイスキーにとっての未開の地においても、忍耐強く仕事をしている。その仕事とは、それぞれの地域で『ウイスキー』という言葉の意味を定義すること。その地域においてスコッチウイスキーを定義する独特の品質を正しく認識するようにすること。そして、そのマーケット内でスコッチウイスキーが同じ土俵で競うことができる公正なチャンスを得ることを保証することである。

現代においてSWAは、新しい辺境の地に赴き、将来貿易がスムーズに確実に行われるようにするために道路や鉄道システムを敷いた開拓者たちに相当する。その主要な武器は忍耐で、風雨に耐え、自然の力に吹き飛ばされる危険に晒されている樫の木というよりも、経済や政治の強風でしなる葦のようだ。

キャンベル・エヴァンス

「私たちが行っていることの多くは、長期戦だ」と、政府・消費者問題担当役員のキャンベル・エバンスがいう。「現在、スコッチウイスキーに関して、世界で最も大きな市場のひとつであるスペインのようなマーケットを見てください。実は、20年前スペインがEU加盟を熱望した際、大仕事に取り組みました。その時スペインで我々が成し遂げたことは、今日エストニアなど新興国のマーケットで行っていることと同等のことと言えるでしょう。すべて長期戦になるからです」

こんなに多くの国々を取り扱うことは、ビリヤードの玉を箱に入れることと少し似ている。片方の端の箱に余分な玉を押し込むと、もう片方の箱から飛び出る。いくつかの国は、他よりもさらに厄介で、時々予期せぬ方角から問題が起こったりする。

「目下のところ、オーストラリアに問題があります」とエバンスが言う。「オーストリアデイスティラーズ アソシエーション(オーストラリア蒸溜所協会)は、高水準を保っていますが、オーストラリア政府がウイスキーとは何かという定義を廃止したため、あたかもスコットランド製のようにデザインし製造された粗悪な製品が大量に出回っています。このことに歯止めをかけることが重要なのです。なぜなら、ウイスキーをあまり良く知らない誰かにとって“これがスコッチウイスキーだ”という初めての体験が、実は工業的に風味付けされたものだという可能性が高くなり、それにより人によっては一生ウイスキーに手を伸ばさなくなるかもしれないからです」

「我々は、SWAの主張を受け入れる姿勢を歓迎します。例えば米国は、スコッチウイスキーとはすなわちSWAがスコッチウイスキーと認めるものだ、という態度を取ってくれています。中国でも大きな支持を得ました。大々的に偽造品の廃棄が行われるのです。偽造品が集められ、地方高官が見守る中で蒸気ローラーによって廃棄されるのです

一難去ってまた一難。連続して他の違反者が現れる。例えば、世界で最も大きなマーケットであるインドの挑戦は、とてもよく実情を伝えている。

「まるで28ヵ所の異なるマーケットを扱っているようです。なぜなら、州ごとに地方税と規制があるからです」と国際問題担当役員のピーター・ウィルキンソンが述べる。「私たちはこの2、3年の間、大きな進歩を遂げてきました。しかし、さらにやらなければならないことがあるのです。引き続き任務に取り組み、それには多くの時間がかかります。地方のイベントが一役買っており、近々の選挙結果が助けとなることを願っています」

SWAは、外交の最前線に取り組む一方で、国内問題にも注意を向けている。例えば環境問題にどのように応じていくか、その姿勢を公開している。近年投じた数億ポンドにのぼる投資に関しては、業界をあげて二酸化炭素削減の実現を確かなものにするプランを策定した。また最近は、ウイスキー以外の製品をギフトショップで販売できなくなるかもしれないという窮地から蒸溜所を救った。アルコールが厳しい監視下に置かれる最中、また政権交代の可能性が示唆される中、慌ただしい政治論争の時期が迫りつつある。

「我々がこのような会議を行うことは重要なのです。なぜなら、何年にもわたって、政治家たちを理解するように努め、政治家たちもまた我々を知ろうとしてきたからです」エバンスが言う。「政治家が英国の利害を左右する以上、確実に彼らの優先順位リストのトップまたはトップに近づくようにするため、できうる限りのことすべてを行わなければなりません」

そう言って、エバンスは建物の中心部へと消えていった。

デービッド・ウィリアムソン

昼食後、広報担当マネージャーのデービット・ウィリアムソンが、私をスコットランドホームカミングの祝典の一環である展覧会へと連れて行ってくれた。ウイスキーづくりに関する最古の文献である1494年の財務目録や、ロビー(ロバート)・バーンズが収税吏として賃金を受け取る際にサインした小切手のオリジナルが展示されている。バーンズの死の1週間前に記した最後のサインは、彼の健康状態を映し出すようにほとんど走り書きで判読しづらく、さすがに胸が詰まった。

「これをあなたに見せたかったのです。なぜなら、スコッチウイスキーの最大の文化的遺産だからです」ウィリアムソンは続けて言った。「ウイスキーの歴史と起源の重要な部分なのです」

SWAにも同じことが言えるかもしれない。我々の愛する飲み物の未来は、最も安全な手の中にある。

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