樽熟成に大きく投資することで、モルトウイスキーの品質を向上させたタムナヴーリン蒸溜所。世界的なマスターブレンダーとともに、スペイサイドの新たな歴史を作ろうとしている。

文:ガヴィン・スミス

 

ホワイト&マッカイのインターナショナルモルト部門を率いるクリスティーン・ビーストンによると、タムナヴーリンのスピリッツはすべてファーストフィルのバーボン樽で熟成されるのだという。

「リッチでまろやかなだけでなく、クラシックなスペイサイドモルト特有の甘味や優美な味わいを表現するのが目的です。そしてホワイト&マッカイでもっとも幅広い層にアピールできる味わいにしたいという思いから、シェリー樽でフィニッシュすることにしました」

タムナヴーリンの醸造担当者、サム・ダグラスも付け加える。

「蒸溜所内に貯蔵庫が2軒ありますが、ほとんどの原酒はホワイト&マッカイのインバーゴードン蒸溜所(グレーン)にある貯蔵施設に運ばれてからシェリー樽で後熟されます。この後熟の期間は6ヶ月から1年間ほど。6ヶ月で十分な場合もあれば、もっと熟成が必要な場合もあってまちまちですね」

シングルモルトウイスキーのブランドとしては、まだ成長期にあるタムナヴーリン。品質向上の鍵となるのが、樽の移し替えプロジェクトだったとサム・ダグラスは振り返る。

「2015年以来、全部で樽4万本ほどある熟成中の原酒のストックから、7,000本強の移し替えを実施してきました。ファーストフィルのバーボン樽ではなかった原酒を、すべてファーストフィルのバーボン樽に詰め替えたのです。以前は疲れ果てたような感じの原酒もありましたが、今ではウイスキーの品質もはっきりと向上しています。樽詰めに使用しているファーストフィルの樽が、非常に高品質なものなのです」

クリスティーン・ビーストンは、さらに重要な設備投資についても教えてくれた。

「2007年に蒸溜所を再開する前、スピリットスチルの形状を変更したんです。首を短くして、どっしりした形にしました。これはより重厚でリッチなウイスキーをつくり、フレーバーに深みを加えるための措置でした」

現在、タムナヴーリン蒸溜所は8人のオペレーターで運営している。貯蔵庫担当はサム・ダグラスと蒸溜所長のガレス・モーガンの2人だ。サム・ダグラスが自身の経歴について説明してくれた。

「ウイスキー業界に入ったときは、まったく正反対の仕事に関わっていました。ケースに入った商品を、ディアジオの海外市場向けに発送する業務です。でもウイスキーづくりへの興味が本当に高まって、スペイサイドに出向させてもらいました。ウイスキーづくりに関わる人たちの並々ならぬ熱意に惹かれたのです。世界にこんな美しい世界があるのかと感動して、スペイサイドに留まる決心をしました。ホワイト&マッカイの仕事に出会う前は、別のウイスキー会社やビール醸造所でも働きました。タムナヴーリンに来てもう2年になります」

 

シェリー樽やワイン樽の後熟で新境地を開拓

 

タムナヴーリンの未来は、明るく開けている。クリスティーン・ビーストンによると、ビジターセンターを再興する計画があるようだ。かつてタムナヴーリン蒸溜所のビジターセンターは、蒸溜所の近くにある歴史的なミルハウス(粉砕棟)の一角にあったのだという。そしてまた新商品の発売に向けた準備も進んでいる。

休止期間を経て再開した2007年にスチルのデザインを変更した。首の短いどっしりとした形状は、重厚でリッチな酒質を生み出すための設計だ。

「スペイサイドフェスティバルまでに、新商品を用意しようと計画しています。名前は『タムナヴーリン シェリーエディション』になるでしょう。他にもまだまだ計画はありますが、とにかくお求めやすい価格で高品質のウイスキーをお届けできるように頑張っています」

マスターブレンダーのリチャード・パターソンによると、「タムナヴーリン シェリーエディション」はヘレスにある3つの樽工房から調達したシェリー樽で後熟したウイスキーである。このシェリー樽にはアメリカンホワイトオークとヨーロピアンオークの両方を使用し、オロロソシェリーでシーズニングしたものである。原酒の仕上がり具合によって熟成期間が変わるので、熟成年を表示しないノンエージステイトメント商品になっているが、決して若いウイスキーではない。スペイサイド産のシングルモルトらしいエレガントな特性があり、レーズン、サルタナ、イチジク、リコリス、マジパンなどの風味を表現する。いずれもオロロソシェリー由来の優美な特徴だ。シェリー樽の後熟で、クラシックなスペイサイドのスタイルが贅沢に進化した味わいである。

さらにリチャード・パターソンは、タムナヴーリンに赤ワイン樽の熟成がよく合うと断言している。昨年の夏には「テンプラニーリョカスクエディション」がトラベルリテール商品として発売された。このような経緯を踏まえて考えると、今後のタムナヴーリンのリリース予定に赤ワイン樽でフィニッシュした商品が含まれている可能性は極めて高いだろう。

クリスティーン・ビーストンが今後の展望を語る。

「タムナヴーリンはブレンデッドウイスキーの原酒としても重宝され、プライベートラベルのボトリングもよく売れています。でも私たちは、これからオフィシャルのシングルモルトウイスキーとして積極的に売り出したいと考えているのです。シングルモルトウイスキーとして有名になり、スペイサイドのおすすめ銘柄のひとつに数えられるよう今後も頑張っていきます」