THE GLENLIVET ALFA 登場
ザ・グレンリベット蒸溜所が1824年創業以来初の試みとして、全てが謎に包まれたウイスキー「ザ・グレンリベット アルファ」を全世界同時発売した。5月9日、その秘密をほんの少し解き明かすイベントへ訪れた。
新宿区内、大江戸線若松河田駅近くの小笠原伯爵邸。独創的で洗練されたスペイン料理を提供することで有名なこのレストランで、「ザ・グレンリベット アルファ」がお披露目された。3,350本限定で5月7日に全世界一斉発売となった。
しかし、そもそも何が「謎」なのか?
まずこの中身の見えないブラックボトル。通の方なら、他にもこのスタイルのボトルには見覚えがあるだろう。しかしそれだけではなく、カスク、熟成年数、テイスティングノートなど、通常なら新商品発売の際に公表される情報がすべて隠されている。ザ・グレンリベット蒸溜所のマスターディスティラー アラン・ウィンチェスター氏が厳選したカスク数樽から構成されるこのウイスキーには、「情報に左右されず、感覚を研ぎ澄ましながらシングルモルト本来の多彩なフレーバーやアロマを感じてほしい」という願いが込められているのだ。
そして、今回用意されたテイスティングアイテムは5種類。このアルファ以外に、ナデューラ、18年、21年、25年が揃っている。これらの色合い、香り、味わいから、アルファの正体を探り出すのが目的だ。
この「難解な謎解き」のナビゲーターとなったのはペルノ・リカール・ジャパン株式会社 ザ・グレンリベットブランドマネージャーのクリスティアン・エルンスト氏。ひとつひとつのアイテムを検証し、またそれぞれに合うチーズとのマリアージュを含めてテイスティングする。ナデューラにはクリーミーなブルーチーズ、18年にはナッティなマンチェゴ、と興味深いテイスティングが続く。
そして新しい提案として、「ザ・グレンリベットと和菓子のマッチング」が紹介された。このマッチングは、「ザ・グレンリベット」のベスト・アンバサダー店である、香川県高松市のモルトバー「Shamrock」で様々な食品とのマッチングを検証された結果、高松の銘菓「名物かまど」が最も高評価であったとのこと。用意されていた「名物かまど」はきめ細かな白餡を使用した和菓子で、口の中でほろりと溶けていく甘さにザ・グレンリベットのバランス良いアルコール感とフルーティーさがなじみ、新鮮な感覚だ。ぜひ皆さんも身近な和菓子と試してみてほしい。
では本題のアルファをウイスキーマガジン・ジャパンなりに検証してみよう。
まず見た目から他の4アイテムと比較すると、色合いはナデューラに近い。
本誌記者の主観的な印象は以下の通り。
香り:バニラの香りが特徴的で、ファーストフィルのバーボンカスクの比率が高そうだ。およそ12~18年前後の熟成と想像される。バーボンカスク熟成のナデューラに比べると、よりクリーミーな甘さが中心で、すこしこってりとした乳製品を思わせる。しかしその奥にザ・グレンリベットらしいフローラルさ(花のような香り)もしっかり存在しており、典型的な良質のスペイサイドモルト。
味わい:香りの通りバニラの甘いアタック、熟成感は中庸で程良く、フレッシュさすら感じることが出来る。フルーツタルト、クリームブリュレ、レモンシロップ、缶詰の黄桃、大麦糖、すこし蜂蜜っぽさ。ボリュームがあり骨格がしっかりしているので加水しても崩れず、むしろ一層甘さが引き立つ。
フィニッシュにかけてはバニラの余韻にハーブや花びら、草原の風のような清々しい香りが鼻を覆う。後半にかけてザ・グレンリベットらしさが顔を覗かせる展開が非常に興味深い。
このボトルの詳細は6月中旬にFacebookにて発表されるとのこと。皆さんもぜひご自身で謎解きに挑戦して、その結果発表を楽しみにお待ちいただければと思う。
テイスティングはこれにとどまらず、会場である小笠原伯爵邸の粋を極めた料理とのフードマリアージュの場が用意されていた。6年連続でミシュランガイドにも掲載されているこのレストランの料理は、一品一品が芸術品のように美しく、その味も素晴らしい。素材の持ち味を生かしつつ1つの料理に濃淡があるところなど、ウイスキーとのマリアージュにはぴったりだ。この料理には12年のソーダ割、こちらには15年をトゥワイス・アップで、とついついグラスもすすむ。中でもさすがはスペイン料理の極みと言えるオロロソシェリーソースを添えたイベリコプルマの炭焼きは、同じく芳醇なシェリー感を備えた21年と最高の相性。今後もザ・グレンリベットはウイスキーとフードの楽しみ方を提案していくとのことなので、こちらにも注目していきたい。
また、この限定ボトル「ザ・グレンリベット・アルファ」は全国の選りすぐりのバーで提供されているとのことなので、バーを訪れてその謎を解明してみてはいかがだろうか。