WMJ的酒場放浪記・8 【京都編その2】
WMJ記者がウイスキーを求めて放浪する「酒場放浪記」第8弾、京都編その2をお届けする。今回は新たに開店した「Bar The Northern Lights」へ。
花遊小路という情緒的な名前の小路を進んで行くと、ふわりと夜空に浮かび上がるように現れる白壁の建物。こちらが「Bar The Northern Lights」だ。8月にオープンしたばかりとのことで、記者が訪れた時はまだ床も壁も真新しかった。前回ご紹介した「Bar Rocking chair」とはまた異なった気持ちの良い空間が広がる。
1階はスタンディングスペースで、14時からオープンしている。程よく賑わっており、笑顔に満ちていてこちらまでつい顔がほころぶ。
2階に上がると、こちらはぐっと落ち着いた雰囲気。ソファに合わせたカウンターは高すぎずゆったりと寛げるようになっており、その日の気分でフロアを使い分け、違うお店のように楽しむことができそうだ。
こちらは32年前にオープンした老舗「ぎをん FINLANDIA BAR」の姉妹店として開店。店名の由来は北欧つながりだ。新しいお店のわりに落ち着いた印象があるのは、もともとは歴史ある鰻屋さんを改装した建物だからだろうか。高い天井を見上げると味わいのある梁と真っ白な壁のコントラストが美しい。
「特に和風の物件を狙ったわけではないんですけどね」とマネージャーの世古 昌弘さん。それでも由緒ある日本的な建物が出てくるのは、京都ならではだろう。
まず最初に、目に留まったオールド・フィッツジェラルドのハイボールをいただく。大きな氷を重ねたグラスにウイスキーを注ぎ、丁寧にステアしてからソーダを注ぐ。キリッと締まった爽快感の後に、バニラが柔らかく漂う。
1階は早い時間から開いているので、今までバーに入ったことがないという方も、ふらりと立ち寄ってくれるそうだ。
「このあたりにはスタンディングで夕方軽く飲めるバーがないので、興味を持っていただけたみたいで」と世古さんは言う。これをきっかけにバーの面白さやお酒の奥深さに目覚める人も多くなるだろう。そして2階に上がってゆったりとお酒を楽しむ頃には、すっかりバーの世界の住人になってしまう、という訳だ。最初の一歩がこのお店であるということは、幸せなスタートであるに違いない。
ウイスキーは1階、2階どちらでもよく飲まれているという。ご当地ものとしての山崎だけでなく、兵庫県の江井ヶ嶋蒸溜所もバックバーに並ぶ。
それでは、とホワイトオーク シングルモルトあかしのストレートを。ジャパニーズウイスキーの他のどのブランドとも一味違う、独特の個性が感じられる。少し粗いような、それでいて優しいキャラメルのような2つの顔が見え隠れする。面白いウイスキーだ。
ジャパニーズだけでなく、どんな蒸溜所がお好きか世古さんに伺ってみた。「キルケランですね。毎年リリースがありますが、出るたびに面白い。こういう新しい蒸溜所って、応援したくなりますよね」…なるほど、歴史の香るこの街の中に、新しいスタイルを打ち立てた方の意見だなと思う。本店にあたる「ぎをん FINLANDIA BAR」も、32年前のオープン当時はお茶屋さんの並ぶ祇園の中では型破り的な存在だったという。「本質を守りながらも新しいものを取り入れる」、それはこのお店が特別である理由につながるのだろう。
欲張ってもう1杯、アイリッシュウイスキーのグリーンスポットをいただいた。
京都に居ながら、ケンタッキーから瀬戸内海、南アイルランドへの大移動だ。こんな旅ができるのもウイスキーの愉しみのひとつ。リンゴの爽やかさとフルーティーな麦の香り、蜂蜜の甘やかさは一日のしめくくりにぴったり。
絶妙の距離感で接してくれる世古さん。祇園のバーで培われた柔らかい接客で、このソファの座り心地以上に「ついつい…」と長居をしたくなってしまう。
席を立ち、階段を下りてスタンディングの1階を抜けてお店を出る。
異なる雰囲気のフロアを持つお店と外の京都の街並み、そしてウイスキーの旅。いくつもの世界が重なり合ってまるで幻のようだ。
そうかもしれない、ここはノーザンライト…「オーロラ」の名を冠したバーなのだから。次に来るときは、また違った表情を見せてくれるのだろう。でもきっとそれも心地よいに違いない。
The Northern Lights/ The Northern Lights Corner
住所:京都市中京区新京極四条上ル 中之町565番23号
1F The Northern Lights Corner
営業時間 14:00~23:00
TEL:075-746-4893
2F Bar The Northern Lights
TEL:075-746-4894
営業時間 17:00~02:00
定休日:水曜