エドラダワーの覚悟【後半/全2回】

November 2, 2013

スコットランド最小の蒸溜所、エドラダワー。エドラダワーとインディペンデント・ボトリングカンパニーのシグナトリーの財務担当重役を兼任しているデス・マカガティが案内してくれた。


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魅力的で伝統的な蒸溜所というエドラダワーの評判は、単にその地でじっと動かないでいたというものではない。むしろ活動的だ。

所有者のアンドリュー・サイミントンは2002年に蒸溜所を購入してから、莫大な投資をしてきた。私が訪れる前に、新しいボトリング施設がオープンして、すべてのエドラダワーとシグナトリーのボトルは敷地内でボトリングされている。ビジターセンターは比較的新しく、ギフトショップは2008年の夏にオープンした。

「このビジターセンターはすでに私たちにとって重要になっています」とマカガティは言う。「私たちはスーパーマーケットと取引をしませんし、相手にしているアウトレットもわずかです。だから、私たちのウイスキーを上手に見せる場所があるということはとても重要です。ボトルの機内持ち込み制限を取りやめると、もっと助かるでしょう」

新規投資として2008年、2009年と継続し、新しい倉庫が建てられた。大きい倉庫が先に建てられ、次の倉庫が建てられたのだ。「つまり、エドラダワーの全てのカスクとシグナトリーのかなりたくさんのカスクを敷地内に保管できるということです。お客様にもっと良いサービスが提供できます」

「例えばアメリカのお客様から、シグナトリー所有のあるカスクをボトリングしてオリジナルラベルを貼りたいと注文されても、納期が2週間ということであれば引き受けられませんでした。そのカスクがどこに保管されているにせよ、ここまで運ぶのに6週間かかっていましたから。倉庫が敷地にあれば、行って持ってくるだけでよいのです」

「私たちはもっと良いテイスティングの施設を提供したいと思っています。ここでやっていることを直接見ていただくために、皆さんにここへ来ていただくことには、大きな意味があるのです」

「展示会やイベントでは、ディスティラー達と訪問者が心を通わせる事ができるのです。ここに来てもらえれば、エドラダワーのことを考えてもらえるようになります」

この蒸溜所にとって重要な別の展開は、シングルモルト用のストックが増えたことだ。というのも、1998年以前は蒸溜所のオーナーがブレンドに混ぜるために、蒸溜所のウイスキー生産量の約4分3を取っていたからだ。とくにハウス・オブ・ローズ12年と5年モノのウイスキーの為に。

「1998年は在庫を返品させてモルト用に保管することにした最初の年でした」とマカガティは言う。「それ以前、ストックは非常に枯渇していて、それが10年用のモルトの確保に影響を与えました。今、その問題はありません」

すなわち、蒸溜所が販売先を拡大でき、さまざまなボトリングを試みて、やがて、15年、18年、21年を含むまでにシリーズを広げることができるということだ。

2008年の後半には、もうひとつの画期的なことも起こった。ポートカスク熟成2003年ビンテージがボトリングされ、アンドリュー・サイミントンが指導して蒸溜したモルトからできた初めてのエドラダワー・ウイスキーになった。

「シングルカスク・ボトリングとしてつくりましたが、さらに別のボトリングもやるつもりです」とマカガティ言う。「2003年にはたった10カスク分しかつくらなかったので、そんなに多くはできないでしょう。しかし、これは実に非常に楽しいお酒です」

エドラダワーのオーナーは全員、不況の時代も乗り切れるとずっと楽観していた。同社は、一部の大会社が抱えるような問題には直面していない。

一時期のカスク不足に対してもだ。「当時、大きな会社ではカスクが底を尽きはじめていると聞いていました」とマカガティは言う。「私たちが最も重要視しているのは、最高品質の樽だけを入手することです。シェリーカスクを約650ポンドで購入していましたが、不足する以前は300ポンドでした。品不足だけが原因ではなく、ポンドがユーロに対して弱かったのも原因です。バーボン・カスクは84ポンドで、前は18ポンドでした」

「しかし、私たちにとってこれは大きな問題ではありませんでした。規模が小さいので、それほど多くのカスクを必要としないからです。大きい蒸溜所にとっては重要な問題になる可能性があります」

「小規模であるゆえに、比較的わずかな手段を講じるだけでビジネスを成長させることができます」

「たとえば、スウェーデンに新しい代理店を指定したので、これまでの150ケースではなく4,000ケース売れるだろうと予想しています。これは私たちにとって大きな前進ですが、これがもしディアジオだったら、4,000ケース出荷を増やしたところで意味がありません」

新しいモルトが生まれ、これからも新しいウイスキーを生み出し続けるということなので、エドラダワーの将来は明るくなるばかりだ。そしてそれは、ウイスキーショップにとっても良いことだ。前半で述べた通り、エドラダワーを求める人は代替品を好まず、エドラダワーを求めるのだから。出荷量が増えればショップで飲みたいときに、エドラダワーに出会えるはずだ。

カテゴリ: Archive, 蒸溜所