アメリカンウイスキーの定番カクテルを再発明

July 30, 2018

ニューヨークと上海で世界的な名声を手にし、母国で初めての店をオープンさせたばかりのバーテンダー。日米のバー文化を越境する後閑信吾氏が、定番のウイスキーカクテルを独創的にアレンジする。

文:WMJ

 

「日本ではあまり知られていませんが、アメリカンウイスキーをベースにしたカクテルはとても多いんです。何しろ現代のカクテル文化は、アメリカが発祥ですから」

ここは東京の渋谷で6月にオープンしたばかりの「The SG Club」。カウンターの向こうでシェイカーを用意しているのは、店主の後閑信吾氏である。2006年に渡米後、ニューヨーク「Angel’s Share」のヘッドバーテンダーを務め、2012年には世界最大規模のカクテルコンペで優勝。上海の2店舗も大成功を収め、2017年には権威ある「Tales of the Cocktail」で「International Bartender of the Year」に輝いた話題のバーテンダーだ。

店名の「SG」は、「Sip」と「Guzzle」の略である。カジュアルにごくごく飲める「Guzzle」(1階)と、ゆっくりちびちび飲める「Sip」(地下1階)。2つの異なるコンセプトを併せ持つバーなのだと後閑氏は説明する。

「母国での第1号店なので、細部にまでこだわりました。バー愛好家に限らず、アメリカのように多彩な人々が気軽に利用できる店を目指しています」

店のコンセプトには、万延元年遣米使節団への思いも込められているのだという。ジョン万次郎、勝海舟、福沢諭吉らが滞在した当時のブロードウェイ界隈には、バーテンディングの父と呼ばれるジェリー・トーマスが店を構えていた。使節団の渡米から2年後に出版されたトーマスのカクテルブックには、日本に触発されたというレシピも掲載されている。

単身ニューヨーク修行で夢を掴んだ後閑氏は、約150年前の使節団と自分自身を重ね合わせた。ひょっとしたら、侍たちはニューヨーク滞在中にトーマスのバーを訪ねたのではないか。初めてのアメリカンバーに感銘を受けた誰かが、帰国後に江戸で日本初のバーを開いたらどんな店になっていたのだろう。

「レトロな調度品、トイレで聞こえる落語、靴磨きのスペース、壁にあしらった畳の風合い。すべてが当時のニューヨークと東京へのオマージュです」

 

ウイスキーの魅力をカクテルで増幅

 

アメリカではメニューを見ずに頼む人も多い定番カクテル。独創的にアレンジされた後閑信吾氏のシグネチャーカクテルは驚きがいっぱいだ。

シェイカーが鳴り響き、1杯目のカクテルが出来上がる。その名は「ジェントルマンズ・ウイスキーサワー」。テネシーウイスキー「ジェントルマンジャック」を使用したオリジナルのウイスキーサワーである。

通常ならウイスキー、レモンジュース、砂糖、卵白をシェイクして作るウイスキーサワーに、後閑氏はメイプルシロップとオレンジジュースも加え、最後にシナモンとオレンジピールで香りを仕上げた。

「ジェントルマンジャックは、2度のチャコールメローイングで磨き抜かれた味わいが魅力。ウイスキーサワーの構造はそのままに、ウッディで滑らかな風味を酸味と甘味で引き立てました。ウイスキーサワーは海外のお客様からの需要が多く、当店の独自性を表現するのにぴったりのカクテルです」

ウイスキーの深いコクが、爽やかなオレンジの衣を纏っている。複雑ながら軽やかな飲み口で、あっという間に飲み干してしまった。

後閑氏はすぐさま2杯目のカクテルに取り掛かる。ケンタッキーダービーの公式カクテル「ミントジュレップ」をアレンジした「ヨンカーズ・ジュレップ」だ。ニューヨーク州のヨンカーズといえば、競馬場とリンゴで有名な町。馬の好物であるリンゴ(ジュース)を加え、ミントの他にディルをトッピングすることで青々とした競馬場の芝も表現している。

「青梅の養蜂家から入手する桜のハチミツや、アンゴスチュラビターズも入ります。ウッドフォードリザーブのしっかりとした風味を補い、クラッシュアイスが溶けても薄まらないよう濃厚に仕上げています」

ウッドフォードリザーブらしいバニラや完熟フルーツの香りが、リンゴやハーブと溶け合っている。夏にぴったりのカクテルだが、氷が溶けてもバランスが崩れない強靭さも流石だ。

最後は、やはり定番の「オールドファッションド」も試してみたい。誰もが知っているクラシックなカクテルだが、後閑氏は完全にユニークなアプローチから再発明を試みる。

「神戸牛の脂を火にかけて甘い香りを出し、ウッドフォードリザーブに混ぜ合わせます。それを冷蔵庫で冷やし、固まった脂をフィルターで漉したものがこのカクテルのベースです」

プレミアムなバーボンに、最高品質の和牛のコクを溶け込ませるという大胆な発想。ここでもハチミツとアンゴスチュラビターズでシンプルに味をまとめ、最後に「和牛マフィア」ブランドのビーフジャーキーをトッピングしている。この「和牛マフィア・ファッションド」は、圧倒的な深みとふくよかさが特長だ。フルボディのバーボンが、これ以上ないほどに優雅な資質を引き出されている。

「バーボンのクオリティがごまかせないレシピなので、香り高いウッドフォードリザーブを選びました。アメリカでオールドファッションドといえば店の顔。当店にとっても、このようなシグネチャーカクテルはますます重要になってくるでしょう」

 

日米のバーテンディングを融合

 

世界のカクテル人気は高まる一方で、若年層も新しい楽しみ方を求めている。後閑信吾氏はニューヨークの人気店でアメリカンスタイルを体得しつつ、日本らしい繊細さも兼ね添えた稀有な存在。日米バー文化の相違も分析している。

「アメリカのバーは店舗が大きく、客が飲むスピードも速い。バーテンダーがチップで生計を立てていることもあって、とにかく杯数が違います。110平米程度の店なら、1晩に延べ2.5人のバーテンダーで700杯くらい作りますよ」

ホスピタリティのあり方にも違いがある。日本のホスピタリティは、お客様を心地よくするため黒子に徹すること。だがアメリカでは、自分がステージに立って楽しませる接客も求められる。

「どちらも間違いではなく、完璧な正解もありません。アメリカはテンポが大切ですが、1杯ごとに集中する丁寧な仕事は日本のほうが上。多彩なお客様のため、自分では両者の長所を取り入れています」

バーテンダーなら誰もが憧れる賞を手にした後閑氏だが、修業時代からの真摯な姿勢はまったく変わっていないようだ。

「自力で賞を勝ち取ったのではなく、皆さんに選んでいただいた意義について考えています。このような名誉を与えられた日本人が、どんなことを期待され、どんな行動によって応えられるのか。バーテンダーという仕事を魅力的に見せることも使命のひとつ。現代の若者が、夜間の長時間労働よりもYouTuberに憧れるのは無理もありません。格好いい職業なんだと発信しなければ、バーテンダーがいなくなってしまう危機感は持っていますよ」

12年ぶりの祖国で、新境地を切り開くトップランナーから目が離せない。

 


ジェントルマンジャック

容量 750ml

度数 40%

参考小売価格(税別) 3,350円


ウッドフォードリザーブ

容量 750ml

度数 43%

参考小売価格(税別) 5,210円

後閑信吾氏の世界観が満喫できる「The SG Club」(東京)、「Speak Low」(上海)、「Sober Company」(上海)の詳細情報はこちらから。

 

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