ウイスキークッキング・12【インド料理 後半/全2回】
スパイスが強い料理はウイスキーに合わないという意見が多い中、現代インド料理と興味深いペアリングを行った。
ウイスキーと現代インド料理の究極のペアリングを求めて、我々はニューデリーのタージマハール・ホテル、レストラン「Varq」でペアリングディナーを行った。
以下がそのメニューと合わせたウイスキーである。
バルキ・クラブ – オーヘントッシャン 12年
見事な香りのこの繊細なモルトは、特別なペアリング体験を始めるのに最適だ。軽くて飲みやすく、軽めに調理したカニの微妙な風味を引き出してくれる。微かにオークが香るソフトなモルトなので、カニのなめらかな質感を余す所なく賞味でき、穏やかな甘さのミディアムフィニッシュが加わる。
優しい香りが、バルク のパリパリ感にニュートラルで穏やかなタッチをもたらし、カニ肉のシルキーさにつながる。
バティ ・プローン – タリスカー 10年
天然の味が豊かなエビは、このモルトにぴったりだ。最初の段階では、豊かでベルベットのように滑らかなエビが味蕾を支配する。十分に調理された小さなひと切れが最も味わい深く、タリスカーに水を数滴加えるとコショウっぽい芳香が穏やかに混じってくる。おもしろいことに、エビのスパイスがモルトのコショウに頭を下げる。タリスカーは傑出したモルトで、ここでは料理から最高のものを引き出している。
ガンデリ ・ケバブ – マッカラン 12年
フローラルなアクセントがあってソフトなこのモルトは、優雅にそのアロマを現す。ソフトなシェリーの香りとメープルの味が、柔らかい肉と微かなスパイスによく合う。タマリンドのソースが対照を成し、これが実に心地よくて革新的だ。
クルマニ・ケ・ケバブ – ブナハーブン 12年
温かくて心地よい、アイラ島の優しい味。最高に心地よい芳香が、蜂蜜掛けナッツと微かな海の塩辛さを放つ。さらに検分すると、豊かなトフィーとレザーっぽいオークの芳香が感じられる。見事にバランスが取れた味は、まろやかなシェリー漬けナッツと極上の天然オークの削り屑が感じられる。ミックススパイスを伴うドライなフィニッシュが、塩とシェリーのライトなフィナーレに溶け込んでゆく。ケバブの穏やかなスパイスが、タマリンドソースと共に温かな抱擁に招く。どちらも豊かな味を受け入れ、芳醇な体験をもたらす親交を楽しんでいる。
アッタ・ラーン –アードベッグ ウーガダール
(サフラン入りパン生地に入れたラムの脚肉のロースト)
モルトの強い味、塩辛い風味が、赤味の肉を受け入れてその味とスパイスを引き立たせ、小麦粉の衣が舌を和らげる。圧倒的なモルトを前にして、十分に調理された柔らかい肉は存在感を保ち、味を提供する。数滴の冷水を加えると、時間と共にモルトがほとんど不承不承に受け入れる。ラムはこのモルトの強い風味によく耐える・・・まぁ、ほぼ!添えられたオリーブ・ナン が独特の風味を加え、見事なモルトの邪魔をすることなくソフトな甘さをもたらす。
グッチ・アウル・クンブ – アバフェルディ21年
深い金色に琥珀色のハイライト。豊かな質感で、蜂蜜が入った香りは甘くクリーミーな強さを持ち、ドライフルーツ、花の咲いたヒース、そして微かな煎ったココナッツの芳香。どちらも甘く、ふくよかな味で、たっぷりしたスコットランド産蜂蜜と豊富なオレンジピールがあり、クリーム、バニラ、そしてオークの香りで直ぐにくつろぐ。フィニッシュは長く、スパイシーでドライ。全くの優しいロマンスが後を引き、そっと触れる指と抑えた情熱を伴う。
マサラ茶クレーム・ブリュレ ― ダルウィニー 14年
夕食後に出され、実に快く甘いモルトの芳香が穏やかに甘いデザートを高める。冷やして楽しもう、冷やすのが正しい。おもしろいことに、この優しい「したたる蜂蜜」のようなウイスキーのおかげで チョコレートは控えめに感じられ、パリッとしたナッツと刺激がソフトな芳香に加わる。素晴らしいディナーの後に楽しむ見事なモルトだが、少し間を置こう。このモルトは味蕾をリフレッシュする力があるようで、チョコレートの豊かな甘さとスムーズに収まる。
インド風ベイクドアラスカ – グレンフィディック 30 年
(スポンジケーキをアイスクリーム、メレンゲで雪山のように覆い、ブランデーを掛けて火をつけ、表面を焦がしたデザート)
世界中で好まれているシングルモルトの豪華なエクスプレッション、グレンフィディック30 年は食後の楽しみに最適だ。このモルトは、焚き火のそばで好きな本か親しい友人たちと一緒に過ごす「くつろぎのひととき」をもたらしてくれる。本当に豪華と言えるこのモルトが、インド風ベイクドアラスカをゆっくりと味わった優雅で穏やかなひとときを、確実に長く記憶に留めてくれるだろう。
インド料理に使われたスパイスは思いがけないモルトのアロマを引き出し、ウイスキーの甘さや樽の香りが素材に奥行きを与える… 繊細なインド料理とウイスキー、こんな楽しみ方も知らなければ勿体ない!
インド料理に限らず、スパイスをたっぷりと使った料理にウイスキーを合わせることをためらう方は多いだろう。しかしたまには自分のセンスを信じて、冒険をしてみることも必要だ。どうです? キッチンの棚の奥にしまい込んだあのスパイス、使ってみたくなったでしょう?
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