ケンタッキー最新情報【第3回/全3回】
文:マギー・キンバール
バーボンをこよなく愛する人々にとって、ケンタッキー・バーボン・フェスティバル(KBF)はもっとも重要な祝祭イベントのひとつ。毎年9月にケンタッキー州バーズタウンで開催され、毎回5万人以上の来場者が訪れる。今年もカクテル、料理、試飲(40銘柄以上)など、さまざまなクラスが開催される予定だ。
フェスティバルで特に人気のアトラクションが、各蒸溜所チーム同士で競い合う「バレルリレー」である。男女別、シングル、チーム別の各種目に分かれている。ケンタッキー州の蒸溜所を訪れると、貯蔵庫と貯蔵庫の間にこの競技の練習場が設けられているのを目にすることがあるほどだ。出場者は樽の栓が完全に上を向いた状態になるように樽を転がさなければならない。この栓のポジションがずれていると減点の対象になり、全体の所要時間が加算される。
このフェスティバルはまずゴルフトーナメントとしてスタートし、バーボンをペアリングしたディナーへと進化した。その後も長年の変遷を経て、地元の人々に愛されるフェスティバルとなった。昨年はフェスティバルに大きな変化があり、その最たるものがチケット制だ。かつては一部イベントのみをチケット制としていたが、現在は大半のイベント参加にチケット購入が求められる。KBF社長兼COOのランディ・プラッシーは、次のように説明する。
「昨年からフェスティバルの形式に大きな変更を加えたので、参加者と蒸溜所からのフィードバックに注目していました。全体としては、蒸溜酒メーカーとの交流や試飲を重視し、楽しくてためになるプログラムを提供したことが好意的に評価してもらえました。これを踏まえて、今年はさらに包括的なチケットプランを導入し、すべての試飲がチケット料金に含まれるようにしました」
今年から、チケット購入者は蒸溜所ブースで直接ボトルを購入できるようになった。さらにはジャスティンズ・ハウス・オブ・バーボンのボトルショップで、KBF限定のシングルバレルボトルも購入できるとプラッシーは言う。
「KBFが重視しているのは、他では味わえない特別な体験をバーボンファンに提供すること。伝統的な蒸溜所からクラフトディスティラリーまで、40軒以上の蒸溜所とトップブランドが参加します。マスターディスティラー、ウイスキーメーカー、ブランドアンバサダーなどが、それぞれのストーリーやスピリッツを披露する現場です。フェスティバルでは、業界の有名人や専門家によるユニークな教育プログラムなども提供されます」
禁止されていたフェスでの試飲が可能に
KBFに参加したことがある人は、例年と明らかに違うフェスティバルであると覚悟しておかなければならないだろう。会場に来て芝生の上のショップを歩き回り、ビアガーデンでビールとフェス飯を楽しむような楽しみ方は、もはや過去のものとなりつつある。
その代わりに可能になったのが、バーボンの試飲なのだ。ケンタッキー州最大のバーボン生産地であるこの町では、アルコール摂取に関する厳しい法律がある。住民がケンタッキー州でもっとも有名な蒸溜酒を口にすることは伝統的に許されていなかったのだ。
今年から始まったチケット制の大きな利点は、ガライベント以外のケンタッキー・バーボン・フェスティバル全体でも、実際にバーボンを味わえるようになったこと。約20軒の蒸溜所ブースで提供される試飲には、特別なリストバンドが必要となる。リストバンドは入場券と一緒に購入できるが、ただカクテルを楽しみたいだけの来場者には、芝生の上でミックスドリンクを単品購入することも可能だ。
ここ2年の大きな変化といえば、提携蒸溜所からのシングルバレル購入だ。昨年も数種類のセレクションが用意されていたが、今年から大幅に増えることになるとプラッシー氏は言う。
「ケンタッキー・バーボン・フェスティバルの最初の29年間は、シングルバレル購入の機会がありませんでした。それが昨年は10種類、2022年には22種類ものシングルバレルをご用意しています。今年もジャスティンズ・ハウス・オブ・バーボンと提携して、KBFディスティラーズ・ロウ・シリーズを開催予定。このような各種シングルバレルを提供し、テイスティングしてもらうために、蒸溜所パートナーとつながる仕事を本当に楽しんでいます。私たちKBFチーム、JHOBチーム、蒸溜所チームメンバーが実際に各蒸溜所を訪ね、テイスティングに参加してグループでお気に入りの樽を選びます。本当に素晴らしい経験ですよ」
今年のフェスティバルで提供されるシングルバレルは、1792、エンジェルズ・エンヴィ、バレル・バーボン、ブロークン・バレル、チキン・コック、エライジャクレイグ、フォアローゼズ、ケンタッキー・ピアレス、ノブクリーク120、メーカーズマーク、ニューリフ、ニュールー、オールドフォレスター、ペネロープ、ピンフック、ラビットホール(初のシングルバレル商品「ケーブヒル」)、ラックスロウの「レベル」、ラッセルズ・リザーブ(エディ・ラッセルとブルース・ラッセル父子によるハンドメイドのシングルバレル商品)、ウィルダネス・トレイル、ウッドフォードリザーブという顔ぶれだ。KBF主催のバーボンキャピタルBBQチャレンジと蒸溜所紹介の一環で提供される「ディスティラーズ・ロウ・シリーズには、さらに2種類のシングルバレル(ケンタッキー・ピアレス・ライとノブクリーク120)が追加される。
これまでのKBFに参加した人は、フェスティバルの変貌ぶりに驚くことだろう。ケンタッキーバーボンの祭典であることに変わりはない。だが従来のストリートフェスティバルらしい雰囲気ではなく、公式のウイスキーフェスティバルらしい雰囲気が漂っているのだ。周辺の蒸溜所の多くも、この時期には来場者が急増することを見込んでいる。お祭りの期間中は、各蒸溜所でもさまざまな体験ができるだろう。
ケンタッキーまで行けない人は、Instagramの@kybourbonfestをフォローしてみよう。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルは、成長を続けるバーボンの今を実感できるビッグイベントだ。