「NIKKA DISCOVERYシリーズ」第1弾が発売【前半/全2回】

September 17, 2021

2024年のニッカウヰスキー創業90周年に向けて、「NIKKA DISCOVERYシリーズ」の第1弾となる数量限定商品が発売される。驚きに満ちた「シングルモルト余市 ノンピーテッド」と「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」をテイスティングする2回シリーズ。

文:WMJ

 

ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝が、ウイスキーづくりの夢を結実させた2つの蒸溜所。それぞれの風土に育まれたモルト原酒が、ジャパニーズウイスキーを代表する銘柄「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」を生み出してきた。個性的で多彩なモルト原酒は、ニッカのシングルモルト、ブレンデッドモルト、ブレンデッドウイスキーの品質を根幹から支えている。

人気の過熱による原酒不足も懸念されるなか、ニッカウヰスキーは積極的な情報発信でファンの期待に応えるため、2017年より数量限定ながら特別なシングルモルトウイスキーを発売してきた。これまでの数量限定商品は、「余市」と「宮城峡」の特徴を生かしつつ、ウッドフィニッシュ(後熟)の個性を付与する面白さがテーマだった。毎年発売を楽しみにしていた方も多いことだろう。

だが今年から、この数量限定商品のコンセプトが刷新される。新しく始まる「NIKKA DISCOVERYシリーズ」は、2024年のニッカ創業90周年に向けたカウントダウンを兼ねるもの。「ひとりでも多くの人に、本物のウイスキーを飲んでもらいたい」という竹鶴政孝の精神を実現するため、ニッカが保有する多様な原酒や、原料や発酵などの製造工程によるウイスキーのつくり分けの歴史に焦点を当てたシリーズとなる。

その第1弾となる2021年の数量限定商品は、「シングルモルト余市 ノンピーテッド」と「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」である。通年商品をよく知る人なら、戸惑ってしまうかもしれない。ピーティーなはずの余市がノンピーテッドで、エレガントなフルーツ香の宮城峡がピーテッド。あべこべのようだが、間違いではない。ともにモルトウイスキーの原材料である「ノンピーテッド麦芽」と「ピーテッド麦芽」の違いに着目し、あえて通年商品のイメージを覆すことで、それぞれのシングルモルトが秘めていた意外な個性を引き出しているのだという。
 

「シングルモルト余市 ノンピーテッド」をテイスティング

 
発売間近の特別なウイスキーを味わってみよう。まずは「シングルモルト余市 ノンピーテッド」だ。余市蒸溜所はストレート型ポットスチルで、昔ながらの石炭直火蒸溜。スチル内での還流が比較的少ないため、重めのフレーバーがスピリッツに残りやすい。そのため重厚で力強く、複雑で深みのあるモルト原酒がつくられる。

そして通年商品「シングルモルト余市」の大きな特徴が、ピーテッド麦芽に由来するスモーク香だ。あのどっしりとした味わいから、ピートの香りを取り除いたらどんな余市になるのだろう。ナビゲートしてくれるのは、特別ボトルのブレンドを処方したニッカウヰスキー主席ブレンダーの綿貫政志氏。現在販売中の「シングルモルト宮城峡」も担当し、エレガントな香味の表現には実績がある。

ノンピーテッド原酒だけの「シングルモルト余市」を初めて処方したニッカウヰスキー主席ブレンダーの綿貫政志氏。ピートの裏に秘められていた余市モルトの個性に驚いた。

グラスを鼻に近づけると、最初の驚きが待っていた。いつもの余市とは明らかに違う。綿貫氏が解説する。

「香りは華やかでフルーティー。エステリーで、余市らしからぬ華やかさがありますね。じっくりと香りを探れば、ほのかなミルキーさや、蜂蜜の甘さ、ココナッツの甘く香ばしい香りも感じられます」

口に含むと、ベリー、洋梨、りんごを思わせるフルーティーな風味が濃厚だ。しっかりとしたモルトのコクが、余市であることを思い出させる。優しく柔らかな甘さが全体を包み込み、口当たりはなめらかで度数の高さを感じさせない。余韻は甘やかで香ばしく、キャラメルのようなコクにほのかな苦味を伴う。

「通年商品で感じられるピート香がなくなったことで、モルトのやわらかな印象が強まっています。少し加水してみましょう。ストレートだとモルト感が強いのですが、水を入れると華やかさがさらに増してきますよ」

比較のために、通年商品の「シングルモルト余市」も味わってみる。香りは穏やかで、心地よいピート感。その底には果実感もあり、しっかりとした麦の甘さも感じられる。比べてみると「シングルモルト余市 ノンピーテッド」は、石炭直火蒸溜による力強さはそのままに、これまでピートの奥に隠れていた余市モルトの柔らかな果実味や、なめらかでコクのある甘さを引き出したシングルモルトといえそうだ。
 

ピートの奥に隠されていた素顔

 
力強く厚みのある「シングルモルト余市」を、あえてノンピーテッド原酒だけでブレンドしなおす。そんな発想は、いったいどこから生まれたのだろうか。綿貫氏によると、通年商品はピーテッド原酒が主体の処方であるため、ノンピーテッド原酒は使用してもごく少量に限られるのだという。

「それでもニッカには、多彩なタイプの原酒をつくって後世に受け継ごうという伝統があります。余市蒸溜所でも、80年代後半からノンピーテッド原酒をつくり始めました。今回の特別ボトルには、1989年に蒸溜された現存で最古のノンピーテッド原酒も使用されています」

余市のノンピーテッド原酒は、フルーティーなエステル香の奥にコクがある。りんごチップスなどのドライフルーツとも相性は抜群だ。

「シングルモルト余市」といえば、力強くピーティーでソルティーな酒質が持ち味だ。そんなイメージを覆すのが、ブレンダーとしての狙いだったと綿貫氏は語る。ノンピーテッド原酒だけで余市のブレンドを組むのは、ニッカとしても初めての試み。だが原酒をサンプリングしたとき、綿貫氏は信じられないほどフルーティーで華やかな酒質に驚いたのだという。

「ピートの裏に秘められていた余市モルトの個性に、私自身も驚かされました。余市のノンピーテッド原酒は、華やかさの奥にしっかりしたコクがあります。新たに発見した素質を最大限に活かすべく、処方を組み立てていきました。フルーティーなエステル香は、熟成すると徐々にこなれてきます。酒齢30年超のまろやかな長期熟成原酒も使いながら、ピークを迎えている酒齢10年前後の原酒で華やかさをしっかり維持できるように心がけました」

かつてない余市の個性を最大限に感じたいなら、まずはストレートで飲んでみよう。オンザロックや水割りなら、モルトのコクやなめらかな甘さが際立つと綿貫氏は言う。そしてハイボールなら、余市のイメージを完全に覆す爽やかなフルーティーさが体験できる。47%という度数は、ノンチルフィルターの香味表現に特化した設計なのだという。

ボトルのデザインにもこだわりが感じられる。ラベル帯とキャップシールは、柔らかな味わいを感じさせるペールブルー。ラベルのベース色はすっきりと上質な白だ(通年商品はクリーム色)。スモーク瓶ではなく透明瓶を採用して、余市が初めて「素顔を見せた」ことを暗示している。

次回は「シングルモルト宮城峡 ピーテッド」をテイスティングする。
(つづく)

 

シングルモルト余市
ノンピーテッド

アルコール分:47%

シングルモルト宮城峡
ピーテッド

アルコール分:48%
容量:瓶700ml
発売日:2021年9月28日(火)
価格:20,000円(税抜)
販売数量:各10,000本

 

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