TIBS2013 Bartenderインタビュー・2 ジム・ミーハン氏

February 27, 2013

Tokyoインターナショナル・バーショー +ウイスキーライヴ2013(TIBS2013)のゲストバーテンダーインタビュー、第2弾をお送りする。「アメリカン・ライジングスター」として登場するジム・ミーハン氏のTIBSにかける意気込みを伺った。

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――この4月にTIBSにお迎えすることを楽しみにしています。日本は初めてですか? 今どのようなお気持ちでしょう?

ジム・ミーハン氏(以下ジム氏) 待ちきれませんよ! 実はこれで6ヵ月の間に3回日本を訪れることになります。昨年10月に、山崎蒸溜所と白州蒸溜所を訪問しました。日本のウイスキー、文化、そしてカクテルシーンの一端に初めて足を踏み入れた素晴らしい体験でした。銀座の「ハイ・ファイブに伺えましたし、「テンダー」では上田和男氏のサービスを受け、京都の「ロッキング・チェア」でも楽しいひとときを過ごしました。
そしてパーク・ハイアットのニューヨーク・バーでバーテンディングを務めるために3月19日から22日まで、うちのスタッフ2名と一緒に来日します。ここで出すための新しいレシピを10点ほど創作しました。妻と生まれたばかりの娘も連れて行くつもりです。魚市場にも行ってみたいと思っていますし、創吉(グラス専門店)でのショッピングも楽しみです。
TIBSではたくさんの日本人バーテンダーの方々とお会いしたいですし、もっと多くのバーを訪れたいですね。友人のバーに立つ可能性も大いにありますよ。詳細はいずれまた!
以前ピーター・ドレリ夫妻と一緒に旅する機会に恵まれましたが、実にステキな方々でした。彼に付いていけるようにベストを尽くしますよ。ピーターの笑顔と笑い声ほど場を明るくするものはありませんからね。

――「Please Don’t Tell」とは面白い名前ですが…ここではどうぞ「教えて」ください。どのようなバーで、どういう特徴があるのでしょう?

ジム氏  「Please Don’t Tell」は、普通にはPDTとして知られています。このバーのユニークなところは、マンハッタンにある有名なホットドッグレストラン「クリフ・ドッグズ」の中を通って、昔の電話ボックスに付いていた折りたたみ扉を抜けて入ることです。現代版もぐり酒場風カクテルバーというコンセプトを広めたことで知られていますが、最終的には、創造性豊かなカクテル、親切なサービス、そして心地よい空間が特徴です。
オープンした頃、世界の有名バーはたいてい格式張っていたので、私たちはあまり高尚にならずにバーを向上させ続けることを目指しました。カクテルに加えて、地元のワインとビールを揃えていることも自慢ですし、マンハッタンで有名なシェフたちが考案したユニークなホットドッグのメニューもあります。PDTを訪れる方たち全員にちょっとしたサプライズがあるようにと考えています。名前については、人に教えないでくれと頼めばきっと教えるだろうと考えました。そのとおりになりましたね。ニューヨーカーは一筋縄ではいきません!

――ジャパニーズバーテンディングについて初めて認識されたのはいつのことですか? また、その印象は変わりましたか?

ジム氏  2000年に、日本人バーテンダーがいると聞いて「エンジェルズ・シェア」(イーストビレッジ)を訪れましたが、残念ながらバーから遠い席に通されたので、その技を見ることはできませんでした。2005年頃、友人のエベン・フリーマンがジャパニーズバーテンディングにいたく関心を持つようになり、「テイラー」(Soho)で日本のハードシェイク法を使い始めました。ちょうどその頃、以前に「エンジェルズ・シェア」のマネージャーだった「Bフラット」(トライベッカ)の池田氏と親しくなり、日本のテクニックを見せてもらいました。2010年には「カクテル・キングダム」(マンハッタンのバー用品/書籍店)のグレッグ・ボームが上田和男氏の著作『カクテルテクニック』を翻訳して、日本のバー哲学を広めました。上野秀嗣さんとは長年にわたり旅先で一緒に過ごしています。ジャパニーズバーテンディングの印象は今も初めて出会ったときと変わりません。洗練されていて、伝統的、緻密で、手厚い。

――どのような経緯でバーテンダーの世界に入られたのでしょう? その後ご自身のスタイルがどのように発展したとお考えですか?

ジム氏  大学の学費の足しにするために1995年にウィスコンシン州マディソンにある「ステート・ストリート・ブラッツ」というバーで働き始めました。そこでは多くを学びました。懸命に働くこと、同僚とお客様を大切にすること、そしてパーティーを主催することと参加することの違い。ファッションと同じように、私たちがサーブするドリンクも時代につれて変化しますが、お客様を大切にして、いいものを提供しようという熱意は同じです。一番変わったのは自分自身でしょうね。始めた頃は18歳の大学生だったのに、今では36歳の社会人であり父親。バービジネスに入ろうと決めたのは22歳のときでしたが、今もそこにいます。大好きなんです。

――カクテルのベースとして今一番関心を持っているお酒は何でしょう?

ジム氏  すべてですよ! そうお断りした上であえて答えるとすれば、最近は日本のウイスキー、日本酒、それに焼酎が好きになっていて、伝統的な日本の料理と飲み物についてもっと学ぼうと思っています。西洋人は日本の料理と飲み物にとても興味を持っていますよ。ミシュランガイドを開いてみてください!

――新しいカクテルのレシピはどこでインスピレーションを得るのですか?

ジム氏  アイディアが浮かぶのは食事中、食料品店や市場にいるとき、それにシャワーを浴びているときですね。常にフレーバーや材料、新製品、カクテルが物語るストーリーのことを考えています。創作プロセスについてはTIBSでお話しするつもりなので、あまり言い過ぎないようにしておきますが、私のアイディアの大半は古典的なカクテルのレシピに基づいています。新しいものを作る一番の方法は、カクテルに使うとは思いもしない材料や、出始めたばかりのものを使うことです。要素が揃ったら、バランスがよくなるまで何度も何度もレシピを試します。そして、最後に「これは美味しいだろうか?」と考えます。その答えが「美味しい」であれば、メニューに加えます。

――2013年のバーテンディング界ではどのような出来事があるとお考えですか?

ジム氏  世界各地それぞれに地元のお酒、農産物、それに料理の伝統がありますから、世界的な流行は少なくなって、それぞれの市場が特化してゆくと思います。ロシア、インド、中国ではミクソロジーの新たな流れが生まれていますから、近い将来には巨大な需要と供給の問題が発生すると思います。アメリカで言えばバーボンとライウイスキーの関係、メキシコではテキーラの原料にするリュウゼツランが不足していますし、スコッチウイスキーも同じ問題が発生するでしょう。クラフトビールやワインの生産者はすでに不足に直面しています。最終的に、多くのバーテンダーは状況を受け入れて手に入るものに集中するようになると思います。
それまでは、次の「大きな出来事」はやはりコミュニケーションテクノロジーの質と連動し続けるでしょう。インターネットは私たちの世界を変えました。言葉、写真、そしてビデオを通じて世界を身近に、そしてひとつにしています。

――この先一生、ひとつのカクテルしか飲めないとしたら、何を選びますか?

ジム氏  チャールズ・H・ベイカーの著書『The Gentleman’s Companion』に載っている「ジミー・ルーズベルト」でしょうね。シャンパンにコニャックとシャルトリューズ・ヴェールを組み合わせたカクテルです。角砂糖と氷が溶けるにつれて口の中で変化してゆき、美味しいんです。ひとつに限定されるとしたら、これほどはまる組合せは他に考えつきませんね!

――今のニューヨークのバー・シーンについてお聞かせ下さい。革新的、それともクラシックなカクテルが優勢ですか?

ジム氏  様々ですね!「ブーカー&ダックス」(イーストビレッジ)はテクノロジーの限界を押し広げつつありますし、新しくオープンした「デッド・ラビット」(ダウンタウンの金融街)や「エクスペリメンタル・カクテルクラブ」(ロウアー・イーストサイド)はニューヨークに国際的な影響を及ぼしています。「ミルク&ハニー」(ロウアー・イーストサイド)は相変わらずクラシック中心。「アスカ」(ブルックリン)のようなレストランバーは料理に重点を置いて、「ペグ・クラブ」(Soho)のような由緒あるバーはサービスとクオリティの高いレベルを維持しています。以前は新しいカクテルバーが1年に2、3軒できれば十分に多い方でしたが、ここ数年は5、6軒のバーが新規オープンしていて、今年などは10軒以上…実に嬉しい状況です。

――アメリカと日本を別にして、目下カクテル界の最前線にいるとお考えの国はどこでしょう?

ジム氏  私にとって、ロンドンは世界のカクテルの首都です。文化的にも多種多様な都市であり、世界的な企業の本部がたくさんありますから、新しいことを生み出す資金もたっぷりあります。ドイツ、デンマーク、オーストラリア、フランス、スイスと、素晴らしい飲み物を楽しみましたが、私にとっては英国が一番魅力的ですね。

――ありがとうございました。TIBSでお会いしましょう!

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