ケンタッキー・バーボン・フェスティバルは、地元密着型のイベントを脱却して全米のウイスキーファンにアピールしている。蒸溜所にとっては、それぞれの個性を表現するチャンスだ。

文:マギー・キンバール
写真:ザック・シンクレア

今年はケンタッキー・バーボン・フェスティバルの32年目にあたる年。だが2020年以降に、いくつかの大きな変化が起きていた。スクランブルゴルフ大会と昼食会から始まったフェスティバルは、いつしかバーズタウン市内で誰もが参加できるタウンピクニックへと発展。しかしビアガーデンやカーニバルスタイルの屋台が中心で、実際にバーボンを味わう機会はほとんどないのも実情だった。

ケンタッキー・バーボン・フェスティバルの代表およびCOOを務めるランディ・プラッシーは語る。

「今年から55軒の蒸溜所でつくられるウイスキーの試飲ができるし、合法的に販売できる蒸溜所のボトルを買うこともできます。参加する蒸溜所は、2019年が11軒、2021年は34軒、昨年は48軒、今年は55〜56軒と増えていきました」

地元民に愛されるイベントから、広くバーボンファンに親しまれるイベントへ。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルはコロナ禍を機に大きな改革を進めている。©Zach Sinclair(メイン写真も)

フェスティバルの内容が変更される前は、主要な蒸溜所がいくつか参加を辞退する動きもあった。今年に向けて参加する蒸溜所が増えたのは、このフェスティバルに対するメーカー各社の信頼が高まったことを示している。一般客の体験も充実することだろう。

プラッシーは、具体的なイベントの変更点についても説明してくれた。

「かつてはゴルフトーナメントやパンケーキの朝食サービスなどの催しもありました。このような地域交流のイベントも、ないよりはあったほうがいいのですが、バーボン・フェスティバルとして不可欠な要素ではなかったのです。そこでバーボン・フェスティバルにとって欠かせない要素以外はひとつひとつ廃止し、蒸溜所に焦点を当てたイベントに回帰しました。音楽の演奏はまだありますが、それ自体がメインではなく、あくまで雰囲気を盛り上げるための音楽になっています」

この32年間で、バーズタウンをはじめケンタッキー州のウイスキー人気は劇的に変化した。バーボン体験を求める観光客は年々増加の一途をたどり、かつては誰でも参加できた蒸溜所ツアーが予約必須になった。ここ数年は、何ヶ月も前から予約しなければならない状況である。

これはバーボンブームのおかげでもあり、蒸溜所がビジター体験の向上を重視してきた成果ともいえる。このような傾向は、ケンタッキー・バーボン・フェスティバル自体にも大きな影響を与えている。プラッシーが実際のフェスティバルの様子について解説する。

「金曜日と土曜日は午後6時まで、日曜日は午後4時までの開催ということにしました。バーボン・フェスティバルの参加者は、お祭り気分のなかで試飲などのユニークな体験を楽しみます」

ダンツログスティル、ヘブンヒル、ラックスロウなど、近隣の蒸溜所はビジター体験に多大な投資をしているとプラッシーは言う。

「食事の内容やイベントスペースでの催しも手の込んだ内容ばかり。蒸溜所がプロデュースするイベントのチケットは、バーボン・フェスティバルが販売している訳ではありません。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルが、このような各社のイベントを公認している訳でもありません」

それでも蒸溜所がイベントの内容を共有してくれたら、フェスティバルの参加者には閉幕後の6時以降に各イベントを訪ねるように宣伝する。こうすることで、各蒸溜所が独自にテーマをコントロールできるのだとプラッシーは言う。

「バーボン・フェスティバルの参加者が蒸留所内を見学できるチャンスを、蒸溜所側でも提供できるのは本当に素晴らしいこと。正規のツアーが数ヶ月前から予約でいっぱいになっているような蒸溜所なら、なおさら価値があります」
 

蒸溜所とゲストが主役のウイスキーイベント

 
ケンタッキー・バーボン・フェスティバルに出店するブランドは、フード提供者や雑貨ショップに至るまで、すべてケンタッキー州と関係がなければならないとプラッシーは説明する。

「参加する出店者の条件は、ケンタッキー州とつながりがあること。出店する蒸溜所は、蒸溜、樽詰め、熟成、瓶詰めをケンタッキー州内でおこなっていなければなりません。つまりはケンタッキーバーボン限定です」

ケンタッキー・バーボン・フェスティバルには、他のウイスキー・フェスティバルにはないユニークな特徴もある。これまでのフェスティバルでは地元のパッケージ業者と提携して「KBFプライベート・バレル・ピック」といった限定ボトルを販売してきたが、法律の改正によって今年は生産者が消費者に直接商品を販売できるようになった。

屋外のイベントが午後6時で終わっても、各蒸留所の主催による夜のイベントが続く。ケンタッキー・バーボン・フェスティバルは、バーボンファンが訪ねてみたい秋の風物詩になろうとしている。©Zach Sinclair

「フェスティバル限定のシングルバレルを購入するのに、これまでは人々が長蛇の列を作っていました。でも今年からはそれぞれのバーボンメーカーが販売することで、お客さまも好きな蒸溜所と直接交流できる機会が増えます。小売業者や流通業者を間に挟まず、いわば中間業者を排除したかたち。消費者にウイスキーを直接販売できるのも進歩のひとつです」

フェスティバルの変革は、3年がかりで進められてきた。子供向けの遊び場がなくなり、教会でのピクニックを思わせる昔ながらの雰囲気が失われたことについては、あまり快く思っていない地元の観客もいる。だが新しい形態のフェスティバルは、チケット販売だけを見ればいたって好調だとプラッセは言う。

「新しいモデルのフェスティバルに変わってから3年目。私たちは誰も失うことなくイベントを進化させ、参加者もさまざまなチャンスを手に入れられるようになりました。フェスティバルにおける最大の変化は、参加する蒸溜所のみなさんからもたらされています。それぞれの蒸溜所が個性を表現していくための場を提供し、活動をサポートする形です」

コロナ禍によって中断していたが、ようやく復活したのはフェスティバルの食事だ。ルイビルのフードトラック協会から、12〜14チームの人気屋台が参加する予定である。フェスティバル主催者の要請により、各店はメニューの少なくとも1つにバーボンを使っている。

熱心なフェスティバル・ファンも、ユニークな体験を求めるケンタッキーバーボン愛好者も満足できること間違いなし。今年のケンタッキー・バーボン・フェスティバルは、過去最高のバーボン体験を約束してくれる。