キリン ブレンド体験イベントレポート

July 21, 2014

7/5(土)、キリンのウイスキーブレンド体験イベントが行われた。その様子をレポート。

本年4月1日にオープンしたキリン株式会社のオンラインショップ「DRINX」。家庭でウイスキーのブレンドを体験できるという4種類の原酒をセットにした「自然を愉しむ4種の原酒 THE HOUSKY ORIGINAL BLEND KIT」を発売して、話題となったことは記憶にも新しいだろう(数量限定のため、現在は販売を終了)。

今回はこの「THE HOUSKY」の購入者を対象にした「THE HOUSKY ファン感謝Day!」というイベント。チーフブレンダーによるブレンディングの講座があるとのことで、参加させていただいた。

会は2部に分かれており、前半ではブレンディングを体験。こちらは田中 城太チーフブレンダーが担当。ウイスキーの製法から富士御殿場蒸溜所の特色を説明。蒸溜所については後日詳細なレポートを掲載するので、ぜひそちらをお楽しみに。

キリンでは、ブレンディングは「ハーモニー」、「エボルーション」、「シナジー」、「トライ&エラー」という4つの柱を基本としている。
「ハーモニー」は調和、様々な原酒のバランスをとることである。
「エボルーション」は進化、新しい味をつくり上げることだ。混ぜ合わせることで原酒が持っていない味を生み出す、それがブレンディングの最も特徴的な効果だろう。
「シナジー」は相乗効果…原酒を組み合わせることで「1+1」が2ではなく3にも4にもなり、時にはマイナスにもなる。諸刃の剣ではあるが、それを使いこなすことがブレンダーの技術なのである。
「トライ&エラー」は成功と失敗を繰り返して目標に近づくこと、田中氏はそれを「筋書きのないドラマ」とも表現していた。

そのような高度なブレンディングが出来るのだろうか?と不安もよぎるが、ここはまず体験の場…商品化するわけではないのだから自分の好みに合うものをつくってみれば良い。自分好みのウイスキーをつくるには、目標となる味を設定し、原酒の組み合わせを考える。そして味の骨格となる原酒「キーモルト」を選び、それを核として他の原酒の比率を決めていくのだそうだ。

ここで使用できる原酒は4つ。実際に「THE HOUSKY」として販売されたものと同じウイスキーだ。
①はジャパニーズタイプ、ピート香が少なく華やかなモルト、②はスコッチタイプ、ピーティで骨太なモルト。③はバーボンタイプで、チャーした新樽熟成の力強くバニラ香の高いグレーン、④はカナディアンタイプのライトで穏やかなグレーンだ。
それぞれ46%に調整されている。同量の水で割った時の23%という度数が一番香りが開きやすいという理論に基づいているそうだ。

記者は「柔らかく華やかなウイスキー」を目指し、①を中心に④と②でバランスを取り、③は数滴程度という作戦を立ててブレンド。しかし思った以上に②の個性が強く、①のフレーバーを高めるためにもう少し加えてみたが、なかなか表に現れてこない。

そこで田中ブレンダーに頂いたアドバイスどおり④を足してみると、驚くほどにまとまりが良くなっただけでなく、他の原酒の個性も引き出されてきた。
単体ではややドライで軽やかなグレーンが、モルトの華やかさやフルーツや蜂蜜の甘みを発展させたのだ。これがブレンドの醍醐味か、と唸ってしまう。そして③をもう数滴加えてみると、バニラやキャラメルのフレーバーがボディに厚みを与えてくれ、奥行きが増した。やはりブレンデッドウイスキーは良いグレーンに支えられているということを実感。ウイスキーの個性を楽しむだけでなく、ブレンデッドウイスキーの奥深さを知る、貴重な体験となった。

後半では樋浦 竹彦ブレンダーによるウイスキーとフードのマリアージュ講座
ウイスキーに合わせるおつまみのポイントは、食材の水分量やボリューム、味の濃さで飲み方に合わせるという提案だ。水分の多いものや味の濃いものならハイボール、少ない(薄い)ものならロックに合わせる。
揚げ物や生のフルーツなど頬張るフードにはハイボールが、ドライフルーツやチョコレートなど軽くつまむ程度のものならロックが合うという、分かりやすく家庭で役に立つマリアージュの目安を伝授していただいた。

そしてフレーバーとの合わせ方も…。「DRINX」にて今秋発売検討中の新商品2アイテムに、2種類の羊羹を合わせるという楽しみ方の提案。富士御殿場蒸溜所のノンエイジシングルモルトには「蜂蜜」味の羊羹、シングルグレーンには「黒糖」味の羊羹を合わせるという、和菓子とウイスキーのマリアージュを試す。

モルトにはナシやリンゴなどのフルーツ、ピート、オークが感じられ、瑞々しくシルキー。組み合わせて味わってみると、羊羹の蜂蜜と小豆の優しい甘さが溶け合ってモルトの華やかさや穀物感が引き立つ。ビターチョコレートなどウイスキー単体では見つけられなかったフレーバーが登場するのも新しい発見である。

グレーンはがっしりとしたウッディさがありエステリー、徐々に甘くなってフィニッシュにはすっとドライになる。
こちらに合わせた黒糖の羊羹は濃厚なコクを与えつつ、ポテンシャルの高いグレーンの隠れたフレーバー…アプリコットやメープルシロップなどをどんどん引き出してくる。手軽にでき、かつペアリングの効果が分かりやすいマリアージュの提案だ。

その後、お二人への質問コーナーや「DRINX」スタッフのご挨拶などもあり、和やかな雰囲気のうちイベントは終了。単なるセミナーではなく、通常社員しか入れないスペースで行われた特別なブレンド体験に、来場者は皆満足そうであった。
「DRINX」では今後またイベントを企画されているそうなので、ご興味のある方は会員登録のうえ情報を楽しみにお待ちいただければと思う。

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