ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の50年【後半/全2回】

March 6, 2019

宮城峡蒸溜所の50周年を祝って、希少な原酒をブレンドした特別なウイスキーが発売される。その目玉は、竹鶴政孝もテイスティングした50年前のファーストドロップだ。ニッカウヰスキーの半世紀を味わい、これからの未来を占ってみよう。

文:WMJ

 

眼の前にあるのは、ウイスキーが注がれた2脚のウイスキーグラス。このたび発売される特別なシングルモルトウイスキーだ。深い琥珀色が、長期熟成原酒の存在を示唆している。

ダンネージ式の第6貯蔵庫に、1969年の「ファーストドロップ」を貯蔵した樽が残されていた。この希少な原酒が、今回のリミテッドエディションにも使用されている。

「実をいうと、このウイスキーを提案したのはマーケッターではなくて、ブレンダーの私自身なんです。宮城峡蒸溜所の節目の年で、ようやく実現できました」

ブレンドを担当したニッカウヰスキーの佐久間正チーフブレンダーが、そんな秘話を明かしてくれる。テーマは「ファイブ・ディケイズ」(5つの年代)。宮城峡蒸溜所と余市蒸溜所のモルト原酒から、1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代の原酒を厳選してヴァッティングさせている。いわば蒸溜所の歴史を振り返る総力戦。宮城峡蒸溜所の操業開始は1969年なので、60年代の原酒は宮城峡でつくられた最初期の原酒ということになる。

「宮城峡の竣工は1969年の5月10日ですが、実は3月に試作した本当のファーストドロップがありました。竹鶴政孝が初めて味わい、感謝を込めて新川に流したという原酒です。このウイスキーには、まさにそのスピリッツを50年熟成した原酒も入っているんです」

 

チーフブレンダーとテイスティング

 

佐久間氏の手引きで、待望のテイスティングが始まる。まずは50周年記念の「シングルモルト宮城峡 リミテッドエディション2019」のグラスを手にとった。

「色が濃いのは、シェリー樽の影響です。香りを確かめてください。ブドウ原料の酒精強化ワインらしい甘さが濃厚です。しばらくすると、宮城峡らしいスピリッツの特性も感じられるでしょう。フルーティーで華やかな、ラベンダーやハーブを思わせる香りです」

口に含むと、耽美な衝撃が走った。圧倒的な柔らかさのなかに、どこまでも複雑な深みを漂わせている。

「熟成感のとれた、古酒ならではの柔らかい甘さ。麦の香ばしさや、カシューナッツのような滑らかさも感じられます。樽熟成による渋みもありますが、年数を重ねているので口当たりは非常にソフト。またライトピートの麦芽を使用しているので、鼻の奥にほんのかすかなピートの余韻も感じられますね」

50年熟成の原酒を筆頭に、十数年の比較的若い原酒までを加えることで溌剌とした印象も表現したブレンダー渾身の作である。

宮城峡蒸溜所には製樽工場もある。チャーと呼ばれる内面の焼き付け作業は、樽を再活性化して風味を引き出す重要な工程。1日に約40本が処理される。

もう一方の「シングルモルト余市 リミテッドエディション2019」は、力強く厚みのある味わいの余市モルト原酒の中から、やはり5つの年代の原酒をヴァッティングしたもの。ダークチョコのようなビターな味わいや、香ばしい麦のコクが特長である。オーク由来のバニラの香りに加えて、力強いピートの余韻が圧巻だ。

「シェリーの甘さとは異なった、バニラのような甘い香り。これは新樽由来の要素です。余市らしいピートが、舌に乗った瞬間に鼻へ抜けていきますね。オレンジピールの華やかな香りも感じられ、口の中にピートや麦の香ばしさがいつまでも広がっていきますね」
各年代のモルト原酒を絶妙に調和させたブレンディングの驚き。どこまでも深く豊かな余韻は、長い歳月と人の英知を積み重ねた贅沢な味わいだ。

「シングルモルト宮城峡 リミテッドエディション2019」と「シングルモルト余市 リミテッドエディション2019」は、3月12日(火)から各700本限定で発売予定。数量が少ないため、ホテルやバーなど業務用市場が対象となる。

 

「ウイスキー未来基地」から、次の半世紀をスタート

 

宮城峡蒸溜所の設立50周年を記念し、今年のニッカウヰスキーは数量限定商品の発売や特別企画展などで蒸溜所の魅力を伝えていく予定だ。キャンペーンのテーマは「ウイスキー未来基地」。過去を振り返るだけでなく、革新的なスピリッツの可能性に挑戦を続けていこうというニッカウヰスキーの強い意思が込められている。

宮城峡蒸溜所の50周年を記念した2つの特別なウイスキー。竹鶴政孝が描いた夢は、さらに新しい挑戦へと続いていく。

アサヒビール洋酒・焼酎マーケティング部の奥田大作部長によると、2018年の国内ウイスキー市場は前年比108.7%と引き続き拡大傾向を示している。目下の問題は、継続的な需要増大による原酒不足だ。

将来的な安定供給を目指し、宮城峡蒸溜所はモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方で増産計画を進めている。2019年の生産量は、ともに2015年比で約180%となる見込みだ。また2021年までに宮城峡蒸溜所でウイスキー樽貯蔵庫を新設して、原酒所蔵能力を約4割増とする予定である。

アニバーサリーイヤーとなる今年は、宮城峡蒸溜所のグレーンウイスキーを使用した「スーパーニッカ」、カフェスチルを活用した革新的スピリッツ「ニッカ カフェジン」「ニッカ カフェウォッカ」などの商品でも50周年を祝う予定だ。ニッカウヰスキーホームページ内に新設する専用サイト(https://www.nikka.com/distilleries/miyagikyo/50th/)で情報をチェックしてみよう。

竹鶴政孝が目指した理想のウイスキーづくりに終わりはない。宮城峡蒸溜所は、新しい半世紀に向けて一歩を踏み出したばかりだ。

 

シングルモルト宮城峡
リミテッドエディション2019

シングルモルト余市
リミテッドエディション2019

アルコール分:48%
容量:瓶700ml
発売日:2019年3月12日(火)
価格:オープン価格(参考小売価格:税別各300,000円)
販売数量:各700本

 

ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所設立50周年の公式サイトはこちらから。

 

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