「ザ・マッカラン1824」セミナーレポート

March 11, 2014

ザ・マッカラン新シリーズ発売に伴って開催されたセミナーをレポート。本日より限定販売される新シリーズ「1824」3アイテムとザ・マッカランの深遠なる世界観を紹介。

シングルモルトの王道「ザ・マッカラン」。一昔前には「スコッチのロールスロイス」と呼ばれ、今では「シャトーモルト」と謳われる。なぜこれほどに有名で、一流の名をほしいままにしているのか? そのカギを握る2人の「マスター」が来日、セミナーを行った。

最初に「マスター・オブ・ウッド」であるスチュアート・マクファーソン氏が、ザ・マッカランの樽へのこだわりについて説明。同氏は1979年にグラスゴーで樽職人としてウイスキー業界でのキャリアをスタート。クーパレッジの現場監督、総責任者を経て、2012年にマスター・オブ・ウッドとなった樽一筋35年、『ザ・マッカランの樽のキーパーソン』である。

ザ・マッカランが現在保有しているおよそ20万4000樽のうち(全て蒸溜所内で熟成)、18万2000樽がシェリー樽である。そしてその樽はスペインのガリシア、アストゥリアス、カンタブリアの森から切り出されるスパニッシュオークと、オハイオ、ケンタッキー、ミズーリからスペインへ運び込んだアメリカンオークから造られる。
上記全てのスペインの森は自社で管理しており、ドングリの状態までチェックするという徹底ぶり。しかし製材された木材はすぐ樽になれるわけではない。まずスペイン北部で4~6か月、その後南部ヘレスに運ばれ16~18か月以上の期間自然乾燥させる。この約2年間の乾燥によって木に含まれるタンニンが除かれるのだ。それから側板を組み上げ、仕上げに内側をトーストする。チャーリングではザ・マッカランの目指す味わいが実現できないため、軽く焦がす程度に焼きを入れて、鏡板を取り付けて完成だ。

アメリカンオークも、製材されてからヘレスに運ばれ、同様の過程を経て樽となる。アメリカンオークを使用したシェリー樽は非常に珍しい。アメリカンオークは成長が早く木質が密で、「目の詰まった」樽材に仕上がる。それに対してスパニッシュオークはゆっくり育ち、木目に空洞が多いため液体が木の中に入り込みやすく、スピリッツへの影響が大きくなる。それぞれの特徴を生かした樽…これも原酒の多様さに貢献しているのだろう。

この樽の製造工程に関しては、ザ・マッカランの樽造りを一手に引き受けるスペインのTevasa社で行われているが、その様子はこちらの映像で見ていただければと思う。

このように時間をかけて造り上げられた樽だが、「シェリー樽」になるためには当然シェリーを熟成させなければならない。このシーズニングという過程では、オロロソシェリーを詰めて約18カ月間、樽にじっくりとフレーバーを蓄えさせる。ここまでの長い過程を経てザ・マッカランのゆりかごとなる「完璧なシェリー樽」がようやく完成し、スペイサイドの蒸溜所へ送られるのである。

さて、熟成させる中身であるスピリッツのつくりも、多岐にわたるこだわりがある。こちらの説明は「マスター・オブ・スピリット」ボブ・ダルガーノ氏が行った。ダルガーノ氏は1984年にザ・マッカランの熟成庫で樽管理を始め、マッシュタン担当、熟成庫の責任者を経てブレンダーに就任。2000年には「マスター・オブ・スピリット(製造責任者)」となり、2004年に「ファインオーク」を手掛けた『ザ・マッカランのスピリッツのキーパーソン』である。

スピリッツのつくりにも、原料から独自性が光る。大麦はオリジナルの品種「ミンストレル」を使用。蒸溜所所有地と24軒の契約農家で栽培している。この香り豊かでフルーティーな特長を持つ大麦からできたウォッシュを蒸溜するのは、容量3,900Lほどというスペイサイド最小のポットスチルだ。さらに再溜の際に、蒸溜して最初に液体化する部分(ヘッド)と最後に残った部分(テイル)を大幅にカット。全体の16%ほどの「ハート」の部分のみがスピリッツとして、ウイスキーとなることを許されるのである。

この選ばれしスピリッツが、前述のこだわり抜いた樽に詰められ、長い熟成の眠りにつく。これこそが「ザ・マッカラン」の傑出した味わいを作り上げる重要なポイントであった。
そして熟成を経た後は、樽由来の自然な色のままボトリングされる。この色味の違いを生かした「1824」シリーズが本日(3月11日)より数量限定で発売となる。ボトルの詳細は以下の通り。

ザ・マッカラン 1824シリーズ
アンバー(写真左)
ファースト・セカンドフィルスパニッシュ&アメリカンオークシェリー樽
2,400本限定

シエナ (中央)
ファーストフィルスパニッシュ&アメリカンオークシェリー樽
420本限定

ルビー(写真右)
100% ファーストフィルスパニッシュシェリー樽
540本限定

そして定番である「ファインオーク12年」は、スパニッシュオークシェリー樽、アメリカンオークシェリー樽、アメリカンオークバーボン樽という3つの異なるタイプの樽で熟成させた原酒をヴァッティングしたもの。シトラスの清涼感とスパイシーさが感じられる軽やかなタイプ。「シェリー・オーク12年」のどっしりとした芳醇な風味と比較すると、樽の違いがはっきりと感じられるとても面白いテイスティングができる。

すでに多くの方がザ・マッカランを愉しまれているであろうが、今回ご紹介した厳格なまでのこだわりを踏まえて、今一度味わってほしい…その時こそザ・マッカランの深遠かつ優美な世界を感じることができるだろう。

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