世界五大ウイスキーアンバサダーセミナー開催

February 27, 2015

 

2月3日、ビームサントリー社傘下の世界の五大ウイスキーのアンバサダーが勢揃いした。トークショー形式で行われたセミナーをレポート。

昨年のビーム社買収により、世界第三位のスピリッツメーカーとなったサントリー。そして、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本…世界の五大ウイスキーの蒸溜所を所有する世界で唯一のメーカーにもなったのである。
今回、その各地の蒸溜所を代表するアンバサダーが一堂に会する貴重なセミナーが行われた。

来日したのはスコッチウイスキーアンバサダーのサイモン・ブルッキン氏、アイリッシュウイスキーアンバサダーのジョン・キャシュマン氏、アメリカ ジムビーム蒸溜所マスターディスティラーのフレッド・ノー氏、カナディアンウイスキーアンバサダーのダン・トゥーリオ氏。そしてサントリーからは元山崎・白州蒸溜所工場長宮本 博義氏が参加し、進行も務めた。

セミナーは各蒸溜所の説明とフラッグシップアイテムの試飲、そのプレゼンテーションに対し他アンバサダーが感想を述べるという形で行われた。

最初はアメリカ、ジムビーム。ビーム社7代目マスターディスティラーであるフレッド・ノー氏は「ビーム社の歴史はバーボンの歴史」として、1795年から続く家族経営のバーボンづくりを紹介。
ビームの3つのこだわりである「最上の原料」「変わらぬレシピ」「熟成」について、特にバーボンは最低2年の熟成が規定だが、寒暖差の大きいケンタッキーの気候で最低4年じっくり熟成する同社のこだわりを説明した。
メインアイテムの「ジムビーム」のテイスティングではトゥーリオ氏、ブルッキン氏はともに新樽の影響、バニラ香の素晴らしさを挙げ、バーボン樽を使用してウイスキーを生産するつくり手として、バーボンの力強く甘やかな味わいを評価した。

次はキャシュマン氏が、カネマラ蒸溜所世界唯一のピーテッドシングルモルトアイリッシュウイスキーを説明する。
通常アイリッシュウイスキーはピートを焚かないが、カネマラは「エメラルドの国」とも呼ばれる緑豊かなアイルランドのピートを使用する。
14ppmほどの軽めのフェノール値であるが、2回蒸溜でつくられるボディにしっかりと馴染み、アイルランド西部の温暖な気候を思い起こさせる爽やかさが特徴だ。
「カネマラ12年」をテイスティングしたトゥーリオ氏はアイリッシュ特有のライトなスピリッツがこのスモーキーさと非常に合うと語り、宮本氏はスコッチとは異なるピートフレーバーと柔らかさが、新しいアイリッシュウイスキーとして日本でも人気が出るのではないかとコメントした。

3番目には、トゥーリオ氏が1815年以来の「カナディアンクラブ」の興味深い製法を紹介。
ライ麦、ライ麦麦芽、大麦麦芽はポットスチルで、トウモロコシは連続式蒸溜機で蒸溜する。それぞれのニュースピリッツをこの段階でブレンド(プレ・ブレンディング)し、バーボン樽の中で最低3年熟成する。
カナダの厳しい冬でも熟成が進むよう、貯蔵庫の中を年間18~19度程度に温度調整している。日本向けの「カナディアンクラブ・ブラック」ではライとライ麦麦芽の比率がやや高いが、プレ・ブレンディングの段階で生産量をコントロールしなければならないため、非常に難しいそうだ。
キャシュマン氏はカナディアンとアイリッシュは軽くソフトなスタイルが共通するが、ライを使用するという点でカナディアンにはアイリッシュにないスパイシーなフレーバーがあると感想を述べた。

次はラフロイグ蒸溜所…ブルッキン氏はそのスモーキーでピーティー、ヘビーな特徴はアイラの環境がもたらすと語る。
ハイランドのピートには針葉樹を多く含むが、アイラのものには海藻が含まれる。そのピート由来の海のアロマ、同じピート質の地層をくぐり抜けた仕込み水、さらに一年のうち200日以上が雨というアイラの湿潤な環境が、他のスコッチとは全く異なる個性をつくり上げると説明した。
テイスティングアイテムの「ラフロイグ10年」を試したノー氏は、特別な環境が生み出す特別なウイスキーだと評し、キャシュマン氏は同じくピーティーなウイスキーであり、アイルランドとアイラはそれほど離れた距離にはないが全く違う個性になっているその理由を、水質と環境だと語った。

そしてジャパニーズウイスキーとして、宮本氏は「響17年」のつくりを紹介する。
サントリーの2つの蒸溜所が生み出す多様な原酒…ピートの強さ、酵母、スチルや樽などの微妙な違いで原酒に変化をつけ、幅広い原酒タイプを揃えていることを特徴として挙げた。またそれらのバランスを取り、一つの交響曲のようにまとめ上げる繊細なブレンダーの技術が重要と説明した。

最後に、各アンバサダーは今後の展開についてそれぞれコメントした。
ノー氏は「まだバーボンの良さに気づいていない方々にそれを伝えていくのが次の課題。サントリーとともに啓蒙していく」、キャシュマン氏は「アイリッシュウイスキーは世界の市場において最も大きい成長率を見せている。アイラとは異なるピーティーなウイスキーを新たに提案したい」と意気込みを語った。
トゥーリオ氏は「サントリーファミリーの一員として、その素晴らしいブレンディング技術などの良い影響を受けたいと願っている。スーパープレミアムカナディアンという新たな位置づけでも日本市場に受け入れられるような存在を目指す」、ブルッキン氏は「今年は創業200周年という節目。まずは需要に追いつくことが最重要だが、ビームサントリー傘下となった今はボウモアと協力し合い、アイラカテゴリーの強化を図る」と語り、各社このパートナーシップで切磋琢磨しながら自社の品質を高めることを目標に掲げていることが伺えた。
そして宮本氏は「日本の市場だけでなく、これを機にフィールドを広げ、世界各地に日本のウイスキーの良さを伝えていきたい」とコメント。また5人のアンバサダーたちは、このような五大ウイスキー揃い踏みのセミナーを各国で行うことにも前向きな姿勢を見せた。

我々ウイスキーファンにとっても、この新しい五大ウイスキーの関係性は喜ばしいものである。
アメリカは樽を各国に供給し、日本はその繊細なブレンディングや樽管理の技術を紹介する。近くて遠かったスコットランドとアイルランドは、ウイスキーの個性と土地環境(テロワール)の関係を証明しながら共に新しい楽しみ方を提案でき、カナダはその唯一無二な製法で、プレ・ブレンディングの可能性を他国に示し続ける。
ウイスキーである以上、この強力なチームワークの成果が製品として世に出るまでは、まだ時間がかかるかもしれない。いや、もしかしたらもうなにかが動き始めているのだろうか? 興味は尽きない。
この五大ウイスキーの各社を筆頭に、世界のウイスキー情勢に大きな変化が起こっている…確実に、良い方向に。
未来の五大ウイスキーの進化系を想像しつつ、まずはこの5つのウイスキーで世界旅行気分を楽しもう。きっと新たな発見があるはずだ。

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