スコッチウイスキーとエコロジー 【その2/全3回】

October 14, 2013

スコッチウイスキー業界が取り組む環境保護と生産効率の向上-第2回のテーマは大麦。少ない原料から最大限の生産高を得るのは、生産者として最大の課題のひとつである。無駄をなくし、かつ品質の良いスピリッツを得るには?蒸溜業者の挑戦は続く。

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2.大麦<Barley>

スコッチモルトウイスキーの製造で2番目に重要な原材料―大麦
農夫にとっては以前よりもエーカー当たりの産出高が多くなる様々な新種が開発されて、高い効率性が達成されており、一方、蒸溜業者の視点から見ると、今では同量の大麦から以前より多くのアルコールが生産されている。
スコッチモルトウイスキーは原料の産地が強調される製品だが、世界中のどこで栽培された大麦からでもつくることが可能ということは、考えてみれば不思議な話だ。しかし、今日の蒸溜業者はできるだけスコットランド産の大麦を使うように努めていて、2010年にはウイスキーづくりに使用された大麦麦芽の93%以上がスコットランド産だった。
ディアジオは可能な限りスコットランド産の大麦を購入すると公約し、同社のアンディ・ロバーツ調達部長は今年初め、「当社はウイスキー市場で年間5〜10%の成長を目指す。スコットランドがそのための麦芽用大麦を供給できるのであれば、それを購入するだろう」と宣言した。

シーバス・ブラザーズ社アラン・ウィンチェスター
「当社が購入する麦芽はスコットランド産がほとんどですが、ときには英国産や、アイルランド産も入ることになるでしょう。できることなら、何百マイルもの麦芽輸送に関与したくはありませんが。英連邦の大麦の収穫が本当に良くない年には、品質と量で本国産に及ばないと分かっていてもデンマークまで行く可能性があります」と述べている。

過去には、モルティングのために大量の外国産大麦がスコットランドに運ばれたが、1960年代中頃にゴールデン・プロミスが開発されて、英国内で高品質の麦芽用大麦を大規模に栽培できる革新的な能力が生まれた。
ゴールデン・プロミスは成熟が速く、スコットランドの短い夏が終わるまでに実る確率が高いため、同地の農夫にとって「躍進的」な品種だった。茎は堅くて短く、強風に耐える上、以前のあらゆる品種と比べて加工も容易だった。

アラン・ウィンチェスターはさらにこう語る。
「何であれ、蒸溜業者には穀物が最大のコストで、燃料費と人件費がその次です。そのため、私たちは当然ながら最大限の産出高を求めますが、これ以上の改良は無理という地点に本当に達したのです。今では1トン当たり420リットルほどになり、ゴールデン・プロミスであれば370~380リットルほどですが、これは以前の品種からすれば大きな前進でした。量は確かに重要とはいえ、スピリッツの品質が最優先です。経済的な観点から産出高に配慮しつつも、品質を第一にしなければなりません」

【その2へ続く】

 

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