バーフードと楽しむウイスキー【2】「After Taste」

May 20, 2013

酔っぱライター 江口まゆみのバー探訪シリーズ、バーフードとウイスキーを楽しめるバーをご紹介する。第2回は新宿の新店「After Taste」へ。

新宿に3ヶ月前にオープンしたばかりのレストランバーがある。アフターテイストというバーで、店主は新宿で8年間バーテンダーをしていた小山一哉さんだ。
店に入ると、カウンターの奥の棚には、バーで見慣れた洋酒の数々。一見、普通のバーのようだが、奥がオープンキッチンになっていて、しっかりした厨房がある。フレンチのシェフが料理を作っているのである。
「食事ができるバーがあったらいなと思っていたので、この店をつくりました。飲み物はワインもありますが、基本的にはカクテルとウイスキーです」と小山さん。
料理はすべて、フランスで修行した経験もあるシェフの手作りだ。出来合いのものが多いスモークサーモンなども、鮭一匹から仕立てるというから本格的である。

一品目に出てきたのは、イベリコ豚の燻製のカルパッチョ
もちろん自家製で、軽く蜂蜜がかかっている。燻製した豚の塩辛さと蜂蜜が、ミスマッチかと思いきや、素晴らしいコラボレーション。
これに合わせるのは、タリスカー10年のソーダ割りだ。スモーキーで力強いタリスカーが、燻製の風味とよく合う。口開けにふさわしい一杯である。

メイン料理は、本日の熟成肉。今日は、ハンガリーの国宝とされているマンガリッツァ豚を冷製の燻製にし、冷蔵庫で熟成した後ローストした逸品だ。添えられた野菜は、産直の有機野菜。お好みで、黒酢とイチジクのソースをつけていただく。
もともと豚肉の味が濃いのだろうが、熟成することによりさらに味が凝縮している。あとからほどこされた軽いスモークが味を引き締め、噛みしめるほどに肉と脂の旨みがガツンとくる。いやはや、これは旨い!
合わせるお酒は、グレンドロナック15年のストレート。レーズンのような風味があり、ブランデーのような甘さをたたえたウイスキーである。豚肉の甘みに加え、黒酢とイチジクのソースとのマリアージュも素晴らしい。

          

デザートにと出されたのは、ミックスアイスクリーム。これもアイスクリームにナッツやベリーを混ぜたシェフの手作りだ。ナッツの食感が楽しく、ラム酒がしっかりきいていておいしい。
飲むのはアイリッシュコーヒー。アイリッシュウイスキーのブッシュミルズが20ミリリットルも入っているというが、生クリームの甘みとコーヒーの風味で、まったく酒臭さはない。バーでこのようなデザートが出てくるのは珍しく、甘党には嬉しいメニューである。

こんなに本格的な料理をバーで食べたら、さぞかし値が張るだろうと思ったのだが、料理は一品650円からで、カクテルも700円から。もっとも高い熟成肉でも2000円である。
「バーというと、シメの一軒ということが多いですが、この店は最初に来て腹ごしらえをしていただいてもいいですし、最後にカクテルだけ飲みに来られてもいいのです。昼間3時からやっているので、カフェのようにもお使いいただけますよ」と小山さん。

バーでおいしい料理が食べられるのは、女性にとってはかなり嬉しい。一方、男性にとっても、レストランからバーまで女性を連れて行くより、一軒で完結した方がお財布にやさしいのではないだろうか。
いろいろな可能性を秘めたアフターテイスト。今後が楽しみなバーである。

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